夜の出逢い。
「この調子なら明日から動いても平気よ。だけど今日までは大人しくしてる事!良い?」
「はーい。」
よっしゃーー!明日から走り回れる!
「それじゃあ私は行くわね。…早めにナルトと仲直りしなさいよ?」
「…はーい。」
パタン…
簡単に言ってくれるよ、本当。
「私にしか出来ないこと、か。」
シカマルには分かってるんだよね?
ってことは自分の事は自分が一番分かってるとも言うから私でも分かるはずなんだけど…。
「うーん…ダメだ、全く思い浮かばない。」
そもそも私に出来ることと言えば感知と水遁くらいだ。
感知に関しては上忍クラスという自信はあるが、他の体術や忍術に至ってはどれも並。
ギリギリ中忍ライン、ってところだ。
「やっぱ頭使うのは苦手だなー…って、今日満月か?」
不意に空を見上げると綺麗な星空が…。
足は何とか歩けるくらいまでは回復してるから……
「明日からって言われたけど…ちょっと位なら良いかな?」
カラ……タッ
「屋上は綺麗に星見えるなー…、つぅ!
…やっぱまだ痛むか。」
ま、このくらいなら自分で治療しちゃえ。
ブオォオ…
そういえば医療忍術を使えるってのも私の強みか?
でもそれって戦闘においては役立たないし……つまり戦うなってことなのかな?
うーん…でもそれは私にしか出来ないことと外れてるような……
「こんくらいでおっけ…っと。戦わないことがチームのためって言いたいならあの時私に考えさせたりはしないはず…。
シカマルには私が戦闘において役に立てる何かが分かったはず…。」
あー…考えれば考えるほど自分のダメさ加減が嫌になってくる。
「って、弱気になってどうする!簡単に答えが見つかるなら壁だなんていわないだろ!!
それに、約束を果たすまでは忍をやめるわけには――…って、雨?」
サァアアァアァ…
「いきなり降って来ないでよ、もー!
……あ、雨って言えば!!」
ずっと忘れてたけど……私にしか出来ないことってもしかしてアレを使えってことなのかな!?
でもアレとは相性最悪だし…いつでも使えるって訳にはいかないしそれに……
「いや、だからこそ、弱点を克服で着れば私だけの武器になるんじゃ……。
本当、シカマルの頭の良さには参るよ…。アレ見せたのだってずいぶん昔の一回だけだよー?
しかも失敗したのに。」
それを成功する前提で計算するんだから…。
「でも、これで光は見えたっ。」
カリ……
「口寄せの術!!」
ボフンッ!
『…何の用だ。』
「私にしか出来ないことのためにあなたの力が必要なの。」
『断る。』
こんの……くそイルカっ!!相変わらず性格悪いな…。
このイルカは私の家系にて受け継がれていく歴史ある口寄せ動物。
イルカのカルー。
私の両親は生まれてすぐに死期を悟り、まだ幼い私をカルーの主として契約したのだ。
両親には懐いていたので仕方なく私を主と認めたらしいが……。
「仕方なしでも認めたんだから少しくらい懐きなさいよねー。
…って、ちょっ…暴れるんじゃない!!こらっ!」
いかんせん、ワガママなのだ。
しかも一度暴走すると手を付けられないのでよっぽどのピンチにならないと口寄せしない。
あぁ、そういえば忘れてた。
「…っ、あ。」
雨の日にカルーを出すと暴走するんだった。
「カルー…っ、ストップ!!私怪我人…っ、きゃっ!」
背中に乗って動きを止めようとしたら遅かった……暴走し始めたっ!
マズイな…どんどん病院から離れていく…。
カルーのことだから久々に外に出て雨に当たっているので興奮しているのだろう。
私の声など耳にも入っていないだろう…。
「ちょっ…、落ち着けって!暴れたらもどせなっ…うぁ!?」
やばいっ、これじゃあカルーを戻せない。
ってか、ここ森の中ーーー!!
迷子になるんだから早く戻りなさいって!!
つか、足…痛い。
もうだめ。
……落ちる。
「ったく、自分の口寄せくらい扱えるようにしろよ。」
ふいに声がして……
気付いたときにはカルーは消えていた。
そして………
「こんな時間にこんなところで何してた。」
「ぇ……?」
私は誰かに抱きかかえられていた。
顔を上げるとそこには面をした人……。
「暗…部。」
あぁ、最悪だ。
*
ナルトside
夜の任務を終え、森の中を走っていると何かがすごい速さで森のほうへ近づいてくる。
「影鹿。」
「あぁ…この気配。」
間違いなく姫だ。
しかしあいつはまだ入院しているはずだし、何より足が動かないはず……。
「…どうする?」
「こんなところで騒ぎを起こされたらめんどうだからな…。
俺が先に行って様子を見てくる。」
そういって様子を見に向かえば暴走して止まらなくなったイルカの上にしがみついている姫を発見。
「ったく、口寄せした奴に振り回されてどうすんだよ、バカ#Name#がっ。」
とりあえず、姫に気付かれないようにイルカの口寄せを解き、
抱きかかえて一応脅しておく。
ほら、暗部の人間だと分かり怯えている。
だがこの後あんなことになろうとは
このときは思いもしなかった。
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