一人じゃない。
「…っく、姫っ。」
殺気からものすごい勢いでチャクラを吸い取られていく。おまけに力もはいらねぇ。
「お前がいなければ…っ、2人は行き続けていたのに!!」
「……俺の事を知って言っているのか。」
実際、今の姫は無意識に言っているから俺の事をわかっているわけではない。
……けど。
「俺の中にある九尾を無意識に感じ取っているのかもしれないな。
…姫、俺は…「うるさいっ!!」
ブワッ
姫の周りに闇がまとう。それも尋常じゃないでかさ。
「こんなのの説得なんて……。それに、俺が何を言っても姫は…。」
……あれ、まてよ?確か前にも一度だけ姫が取り乱したこと、あったな。
確か……あれはアカデミーの頃。
*
「おい姫、お前の家は親いないのか?」
あぁ、思い出した。この日はアカデミーのイベントか何かで保護者がいっぱいいてそれで……。
「…いないけど……それが何?」
「へー、じゃあずっと独りぼっちなんだな、お前。」
「だから根暗っぽくみえるんだな、ぎゃははっ。」
あははははは…
そう下品に笑ってるやつらに向かって姫は殴りかかって……。
バキィ!!
「「!!??」」
「…あんたたちに私を笑う資格なんてないっ!!」
――…あぁ、そうか。
あの時と 今。
姫の心の中にある闇は何一つ変わってないんだ。
*
「うるさいうるさいうるさい!!」
俺だってずっと独りぼっちだった。
苦しかった、助けて欲しかった。
傍にいて欲しかった。
「姫。」
「私の唯一の家族を返せ!!私はっ…「姫っ!」
「っ!?」
ただ……
「お前の中にずっとある変わらないものは何だ。」
約束を守って欲しかっただけ
そうだろ?
「……ぁ、う。」
「姫は一人じゃない。ずっと傍にいてくれるやつがいただろ?
……家族が……いるだろ?」
「か…ぞ、く?」
「生まれてすぐに姫を一人にさせてしまわないようにと……両親がくれた最初で最後のプレゼントが。」
この封印の鍵が説得なら、俺にはこれしか思い浮かばない。
「……カ、ルー…?」
こいつの闇は「独りぼっち」であることよりも、「家族がいない」ことにあるはずだから。
だから、ずっと傍にいる守り神であるあいつの存在を思い出し、家族を思い出すこと。
パチ…ン
「うっ……がはっ!」
ドサッ…
くそっ…さすがにチャクラを持ってかれすぎたか?…目の前がふらついてきやがる。
「っ…!?あれ、私…ここで何を?……ぁ、――…。」
そこで俺の意識は途切れた。
*
"姫はずっと両親に見守られていたんだな。それに引き換えお前が貰った家族は忌まわしき九尾だ。"
心の中に、声が聞こえてくる。
でも、確かに事実だ。俺は両親の姿を見たのだって半ば夢の中みてーなもんだったし。
話したのだってそれ一度きりで……。
「封印は……解けたのか?」
見渡す限りに広がるのはどこまでも続く、闇。
独りぼっちの 空間。
「くそっ、」
慣れているはずなのに……独り、には。
「……姫っ。」
「……ト。」
「?」
「……ナル…っ!!」
不意に現れた、一筋の光。
それは、あたたかい……
天使の手のようだった。
*
「ナルトっ!!」
「……姫?」
「気がついたぁ!」
「ったく、心配かけさせんじゃねーよ。」
シカマル……
って、それよりも今!!
「…姫、記憶…!!」
「ナルト!シカマルのカルーも、ありがとうね。思い出させてくれて。
私、…ナルトに―「良かった…。」
フワァ…
気がついたとき、私はナルトの腕の中にいて。
正直、恥ずかしい。そして痛い。
けど…
ギュっ…
「助けてくれて、ありがとう。」
『……姫。』
「!カルー。」
口寄せもしていないのに何で……。
『封印の第二段階が解けた時点でお前との口寄せの契約が切れることになっている。
だから…「うん。カルーのしたいようにしていいよ。」
「…姫!?」
「きっと、父さんと母さんもそれを望んでいると思うんだよね。
先祖代々、我が家の守り神としていてくれたけど…何時までも縛り付けていいものじゃないと思うし。
カルーが自由を望むのなら、私は家族としてそれを尊重したいの。」
『ばーか。俺は忠義を尽くすタイプなんだよ。俺の主は姫、お前だろ?
これからずっとお前の"中"にいる。何かあったらいつでも呼べ。ピンチには勝手に出てきて助けてやるから。』
「……カルー。」
そっと、抱きしめようとしたら照れ屋なのか…カルーは消えてしまった。
「ありがとう、大事な家族。」
そして……
「とりあえず、病院戻るか。」
「うん。」
私の中の何かも、変わり始めていた。
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