意識の中。
"本気で言っているのか?"
「当たり前だろ。姫の封印を解いてやれるのはこの場において俺以外いない。」
"先に言っておくがこの封印は生半可な覚悟じゃ死ぬ。
…一歩間違えればあいつもろとも貴様も死ぬんだぞ。"
「姫を残して俺が死ぬわけねーだろ。」
「ナルト…。」
"…ったく、分かったよ。それじゃあ今から封印の解き方を教える。
さっきも言ったが第二段階の封印が解けた時点で俺はこいつとの口寄せの契約が切れる。"
「…それは、お前が姫の守り神としての役割を終えるととっていいのか?」
"勘違いするな。役割を終えるわけじゃねぇ。…契約が切れるだけだ。
あいつの意識の中にいつもいて、何かあれば自分の意志で表に出てこれるようになるだけだ。"
もういいだろ、はじめるぞ…。なんて言われてしまえば俺たちは何も言えないわけで。
"…俺の主はもう…姫だけだ。"
だからカルーのそんなつぶやきも、俺たちは聞こえない振りをした。
「ナルト、お前が失敗するはずねぇとは思っているけど、万が一ってことがあったらどうするつもりだ。」
「考えてねぇな。俺は必ず生きて帰ってくる。」
もちろん、姫と一緒に。
「…暗部総隊長なんだから、必ず戻って来いよ。」
「あぁ…。」
"さっさとしろ。今、こいつの身体は俺がのっとっている。だが、封印を説く間はどうしても俺はこいつから離れなきゃならねぇ。
それに、第二段階の封印が解けるまでは俺はこいつが暴走しないように内側から抑えておくから貴様に何かあっても助けることは出来ない。"
「元々助けてもらうつもりもねーよ。」
…にしても、現実は慣れしずぎててついてけねーな。
"まぁ、口だけじゃ説明し切れんからな。…百聞は一見にしかず。実際行ってこい。"
そういうとかルーは俺に姫の頭に手を置くように指示した。
ス……
"あいつの元までは俺が連れて行ってやる。そこから先は……
お前があいつを説得しろ。"
何を…と聞く前に俺の意識は遠のいていった。
「ナルトッ!!必ず………。」
遠のく意識の中でシカマルの声がした。
*
「……!?ここがカルーの言ってた姫の意識の中、か?」
いので言う心転身の術と言ったところか……。
何の印もなしにここまでの事が出来るとは…
「何者なんだか、あいつは。…それより、姫を説得って言ってたがあれは…「だれっ!?」
ふいに感じる、殺気。
それは間違いなく姫のもので。
「…姫。」
「お前…何者だ!?ここへは誰もこれないはず…っ。何しに来た!?」
あいつのはずなのに…あいつじゃない。
俺はこんな姫を……知らない。
「私をまた傷つけに着たのか!?約束したのに……っ!!また、明日って…!!」
「また…明日?」
もしかして、病室でのあの一言を未だに覚えていてくれたのか?
「姫っ、あれは…「父さんと母さんは!!っ、お前が遠くにやったのか!!」
父さんと…母さん……?
「病室で安静にしてればよくなるって言った…っ、最後には"また、明日"って…。
なのに……どうしてっ!!!」
俺との約束じゃない、姫が言っているのはそれよりずっと前の………
「…親との、記憶か。」
でも、姫の両親は九尾事件以降ずっと意識不明で最期はそのまま息を引き取ったんじゃ……。
「何で急に私の前からいなくなっちゃったのよぉ……!!」
……あいつの言ってた"説得"って言うのはこの状態の姫をいつもの状態にしてやること…なのか?
でも、何を説得すれば……
ガク…ン
「っ…チャクラがすごい勢いで減っていく……?!」
「お前のせいで……父さんと母さんが…っ。」
姫のまとう空気が先ほどとは比べ物にならないものにならないくらい禍々しくなる。
これは本気の……殺意。
*
「ナルト……姫…。」
ボフ…ン!!
「!?お前……っ。」
『っち、やっぱりダメだったか。』
……やっぱりダメだった?
「一体どういうことだ。お前は姫の中であいつの暴走を抑えるんじゃ…。」
『そのつもりだったんだがな…。あいつに拒絶されたら俺はあいつの中に入られない。
…なにせこの封印を解くこと自体が初の試みだからおれ自身も何が起きるのかは分かってねぇんだ。』
「…お前の押さえが利かなくなるとどうなるんだ。」
『さぁな。ただ、おそらく中であいつとナルトってやつの戦いが始まってるはずだ。』
「戦い…?」
『さっきも言っただろ。この封印は生半可な覚悟じゃ死ぬ、と。
この第二段階における封印のカギは"説得"と言うより"理解"に近いな。』
「……理解?」
『あいつの抱えてる闇をどれだけ理解してやれるか…。
意識の中にいるあいつは自我を失った押さないガキだ。誰の声もきこえねぇし、信じない。
ただひたすらに、自分以外の異物を排除すべく相手のチャクラを奪い取る。
……あいつの闇は、人が簡単に理解できるものじゃない。』
「……だろーな。そもそも人の闇自体、簡単に他人が理解できるもんじゃねーだろ。
でも、ナルトなら大丈夫だ。」
独りぼっちの気持ちは、独りぼっちのやつが一番よく分かるんだ。
「そうだろ、ナルト……。」
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