ゼロからの…。  




翌日、俺は再び姫の病室を訪れた。けれどそこには面会謝絶の文字が。
近くにいた看護師に話を聞いたところ、昨日俺が帰ってから精神的に不安定な状態に陥ったらしく、
自分が何者か分からないと言い出したらしい…。


「それって…もしかして…っ。」

俺が昨日はなした手裏剣の話をもし姫が覚えていたとして記憶の中の俺だけを忘れていたとしたら……。
もし、その相手が俺かもしれないを気付いたら……あいつは…っ。


「くそっ、俺は結局また姫を傷つけたってことか…!?」

「ナルト。」

「…サスケ。」

「ちょっと来い。」











*

カラ…


「あ、すみません。今は面会謝絶中で…って、暗部!?」

どうして暗部の人間がこんなところに……!!
あれ?でもこの気配……。


「この前、いのやチョウジたちと一緒にいた……。」

「相変わらず、感知能力だけは群を抜いてるよな、お前。」

何を…言っているの?私が感知能力に長けていることを知ってる…?


「情緒不安定な状態なんだろ?顔見せなきゃいけると思って面をしているだけだ。嫌ならはずす。」

「あ、いや…そっちでもいい、です。」

そして何の許可もなくイスに腰掛ける。

「今日はあんたに相談があってきた。」

「私に…相談?いのやチョウジのほうがいいんじゃ…。」

「…あいつらには余計な心配かけたくなくてな。」


あぁ、よく知らない相手に相談したほうが意外と話せる、見たいな感じのあれか。
確かに、仲がいいからこそ相談しづらいことって言うのもあるよなぁー。


「私で乗れる相談ならどうぞ。」

「さんきゅ。…まぁ、下らない事なんだけど。お前、自分に告白してきてくれた奴が自分の事忘れちまったらどう思う?」

……いきなり何の相談かと思いきやまさかの恋愛相談?!
しかも、告白して来てくれた相手が自分を忘れちゃう……?何それどんな状況よ。

「貴女はその方の告白を受けたんですか?」

「……断った。でも、それから数日しないでまた会ったら俺の存在がまるでなかったかのように忘れてたんだ。」


と言うかこんなことを姫に話す俺はどうなんだろう。もっと他に遠まわしな相談をしたほうが良かったんじゃないのか……とか、今更なことを思う。


「そっか…、それはたとえ告白を断ったとしても辛いですよね。
でも、私ならとりあえずまた思い出してくれるはずと信じて1からその人との関係をやり直すかな。」

「……1から?」

「そっ、だって相手は自分の事なんて何にも覚えてないんでしょ?だったら無理に思い出そうとするより
初めましての状態からまたやり直すの!自分を一度好きになってくれた人なんだよ?関わっていくうちに絶対何か引っかかるものがあると思うんだよね。
それに、もしそれでまた自分を好きになってくれたら、それってすごいことだと思わない?
……まぁ結果的にはフラれるらしいけどさ。」


……やっぱり姫は馬鹿で俺の想像を簡単に超えてくれる。
けど、俺には絶対に思いつかない答えをいつでもくれるんだよな。
それに……馬鹿みたいに純粋に最後まで人を信じぬく素直な心がある。

1から……か、いや――……




「0から、か。」

「……?」


カタ…


「初めまして、俺の名前は奈良シカマル。いのやチョウジとはガキのころからの付き合いなんだ。
……お前が迷惑しなければ"友達"になってくれるか?」


今更こんなことを言うなんて恥ずかしいよな。でも、ゼロからなんだ。仕方ない。


「…っ、もちろん!私は姫。よろしくね、シカマル君!」

「シカマルだけでいい。相談に乗ってくれてサンキューな。姫に相談してよかったわ。
…けど、俺が暗部の面つけて姫に相談したってことは俺とお前の二人だけの秘密な。」

「……?うん、分かった。」



そして俺たちは、もう一度"友達"になった。








*

「サスケ、何だってばよ。」

「姫のことだ。」

「……姫?」

いきなり呼び出されて嫌々ながら病院の屋上まで来ればいきなりこれだ。
正直サスケから姫の事で話があるとは予想外すぎたので動揺してる。


「…姫がどうかしたってば?」

「俺はあいつの秘密を知っている。サクラにはもう話した。だからお前にも話しておく。」


何でサスケがそんなこと……とは思ったがここまで来たら話を最後まで聞こう。


「あいつは……。」


そしてサスケが話したのは俺が綱手から聞いた話と……初めて聞いた姫の記憶が戻るかもしれない活路の話だった。










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