できない。  




「ねぇ姫、いくら気絶したからってそんな冗談、笑えないわよ。」

「…?いのの言っていることがわからないよ。冗談抜きで分からないから聞いてるのよ。」

「何……これってまるで――…「記憶喪失って奴だな。」


記憶喪失!?何だよそれ、冗談じゃねぇよ!


「と…っ、とにかく私、サクラ呼んでくるわ!」


「でも何でナルトとシカマルの事だけ忘れちゃったんだろうね。」

「…まだ俺らだけだとは限らねーだろ。」


…とは言ってもおそらく姫が忘れたのは俺らだけだろうな。

理由はおそらくー――……。


「やっぱりこいつに話すべきじゃなかったのかもな。」


何が原因で姫が記憶喪失になったかは知らないが
よほどの衝撃的な何かがない限り簡単に人の事を忘れたりはしない。


つまり、俺らが暗部だと言うその事実がもしかしたら姫にとっては受け入れられない事実だったのかもしれない。




「姫!?記憶喪失って本当なの!?」

「サクラまで……私記憶なんてなくしてないって言ってるじゃない。
カカシさんやサスケ、ここにはいないけどキバやシノ、ネジやヒナタやリーやテンテン…
砂の里の我愛羅の事も……みーんな覚えてるわよ。」

「………。」

「…シカマルのことまで忘れちゃったのね。」


記憶喪失って言うのは本人には悪気はねぇからな。
忘れたものは忘れたんだからひどい事言われてもしかたねぇのは分かってるつもりだったけど……



「これなら嫌いだって言われてでも俺の事覚えててくれたほうがまし、だな。」











*


「何!?記憶喪失!?」

「とは言っても現段階では俺とナルトに関する記憶が抜けてるくらいですがね。
他の人間や自分に関する質問は全て完璧でした。…あいつの中から俺たちが消えただけで。」


俺はまぁ…自分が暗部だとばらした挙句にずっと想っていてくれたのに振ってしまったんだから
忘れられたとしても…いや、むしろ忘れたかったに違いない。



でもナルトは―――……




「まぁ姫が病院にいるなら私としても色々やりやすいからそれは良い。
…とりあえずお前たちには通常の暗部の任務に……「無理だ。」


……ナルト?


「俺の事を忘れた…?あいつ、俺にまた明日って言ったんだ……なのにっ!!
……俺は姫の記憶が戻るまで暗部の仕事は出来ない。」

「何を言う!!総隊長である貴様の穴を埋めるのがどれほど大変なことか分かっていっているのか!!?」

「それでも出来ない。…俺は姫の傍にいる。」



……驚きを通り越してあきれるぜ、本当。
冷徹で何事に関しても無関心。感情なんてものは任務において不必要と言っていたこいつが……


いや、仲間のためなら感情的にもなるが……女一人でここまでとはな。


「暗部に心はいらない。」

「!」

「何も感じないし心も痛まない。…俺らが姫に言ったことだ。」

「…あぁ。」

「そしてナルト、お前は暗部の姿でいるときは仲間を守る以外においてその感情を確実に殺してきた。
今ここでその暗部の任務を蔑ろにするような真似をするのは姫を裏切ることになるんじゃないのか?」


「それでもいいさ。…それで姫が俺の事を思い出してくれるなら……。」


「お前…っ!本気でそんなことっ…「いい加減にしろ!」


「「…っ。」」


「こんなところでお前らが言い争ったって現状は何も変わらないんだぞ!
…とにかくナルト、そんな状態のお前を任務に生かせるつもりはない。
お前の言うとおり任務は他の奴らでまわす。
…だが、目的のために暗部の任務をこなしてきたのを放棄するんだ。
……それ相応の罰は覚悟しておけよ。」

「……あぁ、すまない。」

「シカマルも頭を冷やせ。それに、お前には変わりにやってもらいたいことがある。」

「分かりました…。」


パタン…




「ったく、二人そろってお通夜みたいな顔しやがって…ナルトにいたってはどうしたと言うんだ。
姫に対して変な感情を持っていなきゃ良いんだがな……。
とりあえず、シカマルのほうは何とかなりそうだから暫くはあいつを使うか。」



それにしても……



「何であの二人の事を忘れたんだ……姫っ!!」





その声は決して姫に届くことなく





木の葉の夜へと消えていった……。









.






  









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