揺れる心。
「ん…。」
「あ、気がついたみたいだよ母さん。」
チャラ…
…手が動かない、ってことは鎖か何かで繋がれてるなっ。
くそっ、こんな奴らに気絶させられた挙句にこの様とは……。
「ライラ…!!ライラはどこ!?」
「俺がライラ。」
…は?何言ってんだこのチャラ男。自分がライラ?
……え?
「子供の姿のほうが警戒されないからね。」
「え?…って言うか何の目的で私をここに…?」
「私がお前を欲したからさ。」
こいつ…ライラの母親とか言う奴……名前は確か――…
「イラー、だったかしら?」
「おや、ちゃんと聞こえていたみたいだねぇ。」
暗くてよく分からないけれど髪が長くて歳は……おばあちゃんになる手前ってところ?
声は女の割りに低くてしわがれてるし…。
「私を欲する?…私の何が欲しいわけ?」
「くくく…。哀れな子だねぇ。自分の存在がどれほどのものか知らないなんて…。」
私の存在がどれほどのものか?
…ただの中忍、と言うよりまがいものの中忍。
「訳わかんない。人違いでしょ。」
「おやおや、本当に知らないんだねぇ。」
「母さん、やっぱり俺にはどうしてもこの女があの…「その名を気安く口にするんじゃないよ!!」
「「!」」
び…びっくりしたぁ。
いきなり大声出さないでよ心臓に悪い!!
「…私はお前を利用して木の葉に復讐したいだけさ。」
「復讐…?
何の目的でそんなことしたいのか知らないけどお断りよ!!
それに、自分で言うのもなんだけど、私は感知意外からっきし…「それはお前の本当の力ではない。」
…私の本当の力じゃない?いやいやそんな冗談誰が信じるんだよ。
「…どういうこと?」
おい自分!!あっさり信じて聞き返しちゃったよ!!
あー…ここがお前のダメなところだって何回カカシさんに注意されたことか…。
「お前のその隠れた力は何者かによって封印されている。そのせいでお前は本来の力が出せないだけだ。」
ま、まじっすか。
…にわかに信じがたい。
封印なんてされた記憶もないし、されたとしても体になんら他の術式が残っているはずだ。
私の身体にはそういったものが一切ない。
「…あなたの―…イラーさんの話を仮に信じるとしても私は封印なんてされた記憶がない。
それに、誰がその封印を解けるって言うの?
それが分かったなら今すぐ私を放しなさい。」
「くく…負けん気の強さと口の悪さは母親譲りって訳か。
良いだろう、何も知らないのなら教えてやろう。
お前の真実をな……。」
*
「狐、ペースを上げすぎだ。そんなんじゃ敵に気付かれる。」
「俺がそんなヘマするかよ。…それにもう近い。」
ったく、いつもの冷静さはカケラもねぇって感じだな。
いつの間に姫がそんなに大事になったんだ?
「何も起きなきゃ良いがな…。」
「急ぐぞ。」
シュッ…
*
「そ…んなっ。」
「この話を信じるかどうかは好きにするがいい。
だが忘れるな。お前はあいつを許して良いわけがないんだ。
私の言うとおりにしろ。そうすればあいつはお前の前から消える…永遠にな。」
イラーは私を混乱させれた目にこんなことを言ってるの?
でもこの話を疑うにはあまりにも筋が通り過ぎている…。
「疑いは…しない。
けど私はそんな自分勝手な理由で木の葉の仲間を裏切るわけにはいかない。」
「…美徳だな。
だがその美徳を守ったせいでお前の両親はどうなった?」
「……っ!!」
「美徳なんて所詮綺麗事に過ぎないんだよ。
人間結局、最後に一番大事なのはわが身なんだからな。」
「……。」
心が、乱される。
落ち着け、こいつの言葉に惑わされるな。
私は木の葉の忍だ。何があろうとも木の葉を裏切る真似だけはしてはいけない…っ。
分かってるのに、そんなこと……。
「母さん、この気配っ!!」
「……ぁ。」
イラーの話に気をとられすぎて感知がおざなりになっていたがこの気配……間違いないっ。
「ぐぁ!?」
「ライラ!?…何者だっ!」
「……姫を返してもらう。」
乱れた心が、落ち着いた。
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