CLOWN×CLOWN


日常×パンツ×にぎやかな朝


盗賊団の彼らは、あっちの国こっちの国へふらふらふらふら。
宝石だのミイラだのを盗み、毎度彼らは楽しそうだ。

メンバーは全部で十三人。
基本的に各々は自由に行動し、召集を掛けられた時のみ集まる―――らしい。らしいというのは、僕が一年前一緒に過ごしたあの九人の子供たち(今は大人)は、結構常にアジトにいるから。聞かされたその話は、九人を除く四人にしか当てはまらない。そして僕はその四人に会ったことがない。

アジトというのも毎回転々としている。それがつまりは、心やさしい彼らによって与えられた僕の家。そこに、いつもあの九人はいる。全然バラバラに生活とかしてない。みんな仲良しさんだ。
うん、素晴らしい。

そんな仲良しさん達に、いつの間にか当然のようにひっついているようになった僕。
それはポンと与えられた、新たな日常。

ふわふわ、ふわふわ。
みんなと一緒に漂う僕は、相変わらずピエロだった。







話は変わって、今日は僕のとある一日をご紹介します。

「ナッツ姉のために盗ってきたんだ」

そう言ってとっても眩しい笑顔を向けてくれる彼はシャルナーク君。金色の髪がとっても綺麗な男の子。爽やか。かわいい。かっこいい。大好きだ。
その彼が紡ぐ台詞がたとえ『盗ってきた』なんて物騒なものだとしても、僕は笑顔でありがとうと言う。
その手の中にあるものが、面積少なくね?とついツッコみたくなるようなパンツなんかじゃなかったら。

「履いてくれるよね?」
「履かないよ」

君の年って思春期真っ只中ぐらいだよね、なんでそんな破廉恥なものを爽やかに手にしていられるの。
しかも拒否したからって驚かないでくれる?『ナッツ姉のため』って言葉に僕が弱いからって、何でも言うこと聞くわけじゃないんだぞ。

「君、自分がいくつだと思ってる?そりゃまだまだ若いよ、かといって幼いわけではない。もうそんな、無邪気そうに見えてまったく無邪気ではないお願いが許される年じゃないんだよ?」
「ええ、そんなのナッツ姉だって!自分がいくつだと思ってるの?いや年なんて知らないけど!とりあえずいい加減これぐらいは履きなよ!ボクサーパンツってどんだけ色気ないと思ってんの!」
「何故僕がボクサーパンツ派だと知っている。いつ見た。どうやって見た」

おいこら目を逸らさないの。
まったく、マセた子に育っちゃってまぁ。

…結局パンツは押しつけられた。
現れた時同様爽やかに去っていく、あの子が憎い。

「………」
「どうしたんだナッツ」
「フィン君…」
「何持ってんだ?」
「パンツ」
「は?」
「欲しい?」
「…いらねぇよ」

ものすごく不信な目を向けてくれる彼はフィンクス君。
目つきと態度と言葉は悪いが、本当はたぶんいい子なヤンキー。
…え、ヤンキー?いや違う違う。そんな生易しくないよ。堅気じゃないし。

「どうしたんだよそんなもん。お前ボクサーパンツ派だろ?」
「…え、僕がボクサーパンツ派であることはみんなの公認なの?何ソレ恥ずかしい」

おいこら「やべぇ」って感じで目を逸らすな。覗いたな、二人して僕の何かしらを覗いたな。

「…見逃してあげるかわりにこのパンツもらって」
「んな需要もクソもねぇもんもらってどうすんだよ!」
「恋人にでもあげなよ」
「…ならお前にやる」
「僕は君の恋人じゃないよ」
「…………お前にぶい」
「は?」

何でもいいからとにかくこれを受け取ってくれよ、持っておきたくないよ。切り刻んで処分でも元の場所に返してくるでもいいから。出来れば後者でお願いしますだけど。

「チッ…パクにでも渡してこいよ」
「何言ってんだい、これをパクちゃんに履かせろと?君もしや、このパンツを履いたパクちゃんが見たいの?」
「あほか」
「僕はね、パンツなんてとりあえず機能を果たしてれば何でもいいと思ってるよ。デザインとかそんなものどうでもいい。だけどこのパンツは、どー考えたってパンツとしての機能を果たさないじゃないか。なんだこの布の少なさ、絶対お尻隠れないよ?いやむしろこれパンツなの?パンツだと思い込んでたけどもしやパンツではないの?てかもはやパンツって何?」
「パンツパンツうるせええええ!」

…おお。
しまった、紳士の僕がパンツを連呼するなんて。

「何の話してるの、二人とも」
「「…パンツ」」
「…は?」

話題のパクちゃん登場。美人でやさしい、レディーの鏡。

「…ナッツがこのパンツをお前にプレゼントしたいんだと」
「まぁ!」
「え、ちょ、フィン君…!」
「ナッツからのプレゼントって子供の時以来ね、嬉しい!ありがとう!」
「〜〜〜!」

Oh my God!!
違うとか言えなくなっちゃったよおい!パンツでそんな喜ばないで!ああああ嬉しそうにパンツ握りしめないで!何、パンツをプレゼントされるとそんなに嬉しいもんなの?
…てかまた心の中でパンツ連呼してる僕って…!

「ぱ、パクちゃん…」
「でもナッツはボクサーパンツなのに、これは随分奇抜なのね…あ、私に合わせて選んでくれたのね!」

だから何で君も僕のパンツを認識してんのさぁ!?
僕ちゃんと自分の洗濯物は自分で洗ってるし自分の部屋で干してるよ?何コレ、いい加減本気で恥ずかしくなってきた…

「さっそく明日から履くわね!」
「…喜んでもらえてよかったよ…」

結局そう言うしかなかった。…僕って弱い。
引きつった笑みを浮かべながら、去っていく二人を見送る。そして二人が見えなくなった頃、僕は背後を振り返った。

「…ご用ですかノブナガ君」
「!き、気付いてたのかよ…」
「結構前から」

気まずげにそろそろと出てきたのは、ジャパニーズスタイルが特徴のノブナガ君。
それがジャパニーズを極めた結果なのかはわからないけど、まだ若いのにおっさんくさい。
彼は一体何がしたいのか、フィン君がやってきた頃からずっと僕を見張っていた。気配には敏感な僕に対し、無謀な挑戦だ。

「で、どーしたんだい」
「いや…シャルの奴、あのパンツちゃんと渡せたのかと思って見に…」
「…ほほー、君ら共犯か」
「………」

いい年した大人がなんでパンツなんか盗んでるんだ…一緒にいたならシャル君の若気の至りを止めてあげなよ。
そこで吐いた僕の溜息は大きかった。

「で、でもおめーひでぇじゃねぇか、パクに渡しちまうなんざ」
「あれは僕にとっても誤算だ。見ていたんならわかるだろう?」
「…けっ…」

はい態度わるーい。

「あのねノブナガくん―――」
「ピエロ、ワタシにも何かよこすね」
「…へ?…急に何フェイ君」

まぁ次々とやってくるもんだ。
独特の喋り方がかわいいおチビちゃん、名をフェイ君。きっと生まれはチャイナだと見てる。

「なんで登場と共に物をたかるんだい…?お腹すいた?」
「違う」

…睨まれた。

「さきパクが、ピエロにもらた言て嬉しそうにパンツ見せびらかしに来たよ」
「何してんのパクちゃん!?」
「あいつだけなんておかしいね。ワタシにも何かよこすよ」
「…なるほど、そういうこと…」

あの子だけなんてずるーい、贔屓だよせんせー
とまぁこんな感じなんだろう。こう好意的な言葉で表現してみるとかわいいなフェイ君ってば。

「フェイタン、ガキかおめぇ…」
「まぁまぁ、可愛げがあっていいよ。フェイ君、じゃあ何が欲しいの?」
「………」
「ああ、そこまで考えてなかった?じゃあもういっそパンツにする?」
「いらないね」

だってなんだか今日は会話がパンツまみれだ。
普通そんなことってまぁないよね、今日という日をパンツ記念日とでも名付けようかぐらいの勢いだよ。
まぁ当然「くだらねぇ」とノブナガ君に足蹴にされて、それは却下となったけど。


うるさいなぁとでも言いたげなライトに苦笑いするしかない、そんなにぎやかな朝。


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