CLOWN×CLOWN


仮面×本業×怪盗クラウン


絶をする際、ライトには僕の中に入ってもらった。
だって僕自身のオーラを消していても、オーラの塊であるこの子が傍にいると意味がないから。

ライトに対して陰≠ニやらは使えなかった。僕とライトは別の個体として存在しているからかな。ライト自身に、僕が干渉することはできない。
ライト自身が絶を覚えられればいいのかなって思ったりもするけど、まだそれを試そうとしたことはない。

「あ、まずい暗い」

博物館の中に無事忍びこんで、思ったことはそれだった。懐中電灯かランプ持ってくればよかった。
まぁ窓からの月明かりのおかげで、見えないことはないからいっか。
…いや正直、ちょっとかっこつけて付けた仮面のせいで視界はすごく悪いけど。

「ケースはずれないなぁ。叩き割っていいかな。いいよね」

勝手な自己完結。
ごめんなさい、と一応小さく謝って拳を振り上げた。
―――が、

「!?」

何かが背後から飛んできたため、僕は拳を振りおろす前にそこから飛び退くことになった。
次の瞬間、僕が今まで立っていたそこや壁に突き刺さる小刀。
ついでに僕が割ろうとしていたケースにも当たって、当然ケースは割れた。…警報装置すら鳴らないなんて、ほんとここ警備なってないな。平和なんだろうな。

「お前…何者ね」
「ええと…怪盗クラウン?」
「それ職業二重になてるね」

もっともなツッコミだった。
逆光で相手の姿が見えないが気配は感じる。昼間会ったフィンクスさん同様…この人も強い。
やだな、『血で血を洗う争いの末、石を手に入れたクラウンは―――』とかって展開は。ライトには悪いかもしれないけど、そこまでして石ほしくない。

「それ、ワタシ達の獲物。横取りしようなんていい度胸」
「Oops…やっぱ貴方、本業さんなんだ」

この道のプロと鉢合わせとか、タイミング悪いにもほどがあるな僕。

「それにそのふざけた格好も、気に食わないよ」
「いやそんなこと言われても…」
「私の前でその格好していいの、この世界で一人だけね」
「理不尽!」

でもなんだ、ちょっと羨ましいなその人!
貴方随分思われてますよーと名も知らぬその人に心の中で叫んでみる。目の前の彼の攻撃をかわしながら。
絶は既に解いた。向こうは殺る気まんまんみたいだし、こっちも少しはやる気にならないと危険だ。あんな理不尽な理由で殺されたくない。

「ライト!」
「ワン!」

呼ぶと彼はすぐに出てきてくれた。
僕がこの人の相手をしながらでも、この子が石を手に入れられればそれでいいんだ。君がどうしてそこまであの石にこだわるのかはわからないけど、僕だってもうここまで来たら後には引けないよ。君のお願い、どうしても叶えてあげたい。隙をみつけて走り出すんだよ。

「そんなちさい犬出すのがお前の能力か」
「ちっちっち。この子を舐めちゃ駄目だよ坊や」
「………」

さっき接近戦に持ち込まれた時になんとなくわかった。
相手はおそらく子供だ。
声からして性別は男だろうが僕よりは確実に身長が低かった。
だけどなんだろう。この違和感は。

「ていうか君…僕と会ったことない?さっきからどうにも、君のそのしゃべり方が気になるんだけど…」

ううん、気になるどころじゃない。すごく不思議。
すごく似ているんだ、一年前出会ったあの子供の言動に。
そんなはずないとわかっているけど…でも今日は、フィン君に似たあの人にも会った。
これは偶然なのだろうか?

「…ねぇ、君もしかして、フェ―――」

フェイ君なの?
そう尋ねようとした。
でもその前にフッとさっきの比じゃないスピードで目の前に現れた彼に、驚いてつい口を噤む。
けど今度は闇に慣れてきた目で間近にある彼の顔を見て、逆にポカンと口を開けるはめになった。

「フェイ、君…」
「お前、ピエロか?」
「は、はは、変わってないね…フェイ君。ピエロじゃなくてクラウンだって」
「その仮面、外すがいいよ」

相変わらずな物言いだ。
でもやっぱり変わったね。君、もっと小さかったよね。もうちょっと可愛げもあったよね。
…1年で人って変わるんだなぁ。

「グズグズするな」
「はいはい…」

イラついた様子の彼に苦笑しつつ、仮面を外す。
すると彼は、じっと僕の瞳を覗きこんでから―――
鳩尾に一発ぶちかましてきやがった。

「ゴフウッ!きゅ、きゅきゅ急に何!?」
「よくもそんな間抜けヅラでのこのこと現れられたね。ワタシ達が今までどれだけお前探してやたとおもてる」
「へ?は、初耳です…」

た、たとえそうなんだとしても、これは普通に八当たりというものに値するのでは…?
と、そんなことを言える感じではなかった。
なんで自分が探されてたのかも全然わからないけどとにかく僕は、なんだか複雑そうな顔をしているフェイ君の頭をポンポンと撫でてみた。
途端驚いたように見上げられると、反射的ににっこりと笑ってしまう。
ライトが足元で心配そうにうろうろしているけど空いている方の手でこっそりジェスチャーをし、それは鎮めた。
たぶんもう、心配はいらない。

「ひでーなナッツ。俺のことはわからなかったくせに、フェイタンのことはわかったのかよ」
「!」
「遅いねフィンクス。…何故全員いる?」
「俺が連絡したんだよ」

僕は軽く目眩がした。
何これ、今夜はそっくりさん大集合?

「ナッツ…!」
「本当に…師匠なのかい?」
「お前変わってねぇな」
「会いたかったよナッツ姉!」

そっくりさん―――ではなく。
本物ですか。

「あ、あっはっはーいやーみんな大きくなっちゃってー僕嬉しいなー…はは、ははは…」
「十年ぶりだなぁナッツ!」
「そうだねーあははははー………は、じゅ、十年…?」

いやいや、笑えない。


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