CLOWN×CLOWN


恩人×電話×長い長い隠れ鬼


十年前…
俺達には恩人がいた。

あの人がいなければ今の俺達はない。
それほどに大きく、それほどに誇らしい存在。

その人が俺達のもとを去ってから数年が経ち、俺達は故郷を出た。力もつけた。金も手に入れた。
そして俺達はその人を探した。
だが俺達の力のすべてを使っても、あの人を見つけることはできなかった。
何年経っても。欠片もあの人の情報を掴むことはできなかった。

それでも俺達は諦めなかった。
いつか必ず見つける。

「見つけてどうするんだ」と、問われたことがある。
その質問の答えは、結局わからなかった。動機を言語化することは得意じゃない。
ただ見つけたい。それだけだ。


「団長…見つけたぜ」


そんな長い長い隠れ鬼が、今日やっと終わった。






「クロロ―――いや、団長。電話、フィンクスだったの?一体なんだって?」
「…あの人が…ナッツが、見つかったらしい」
「!」
「本当…!?」

マチもパクも、共に驚きを露わにする。
当然だ。今までどれだけ探しても見つけられなかった存在が、こんなにあっけなく。そして突然に。

「あいつらのいる街にいたそうだ」
「なんであんなところに…」
「さあな。…意外と、目的は同じだったりするかもしれないぞ」

今日フィンクスたちが盗みに入る予定だった博物館。そこにナッツは入ったらしい。
円を使ってナッツを探し、ストーカーを働いたフィンクスからの情報だ。食い入るように、期間限定で展示されている化石を見ていたらしい。
「どうする?」と聞いてきたフィンクスにそのまま捕まえさせてもよかったが、彼女に手荒いことはしたくなかった。ただこれからも後をつけろと、それだけ命じた。

「行くぞ」
「ああ」
「ええ」

彼女と出会ったあの日から、十年。
彼女を探し始めたあの時から、七年。

長かった。


ようやく、会える。




***




『すぐ行く。そのまま後をつけろ』
「了解」

クロロとの通話を終え、俺はすぐに今日の仕事のパートナーであるフェイタンに電話を掛けた。
しかしコール音の次に聞こえてきたのは『おかけになった電話番号は現在電源が入っていないか電波の届かないところに…』というあれだ。

まずいな。今日の仕事は中止だと伝えなきゃならねぇってのに。ったく、何してんだあいつは…!
この街にいるのは間違いねぇから、探そうと思えばそうかからずに見つけられるだろう。
だが今、俺がここを離れるわけにはいかない。あいつを―――ナッツを見失うわけにはいかないからだ。

ナッツは絶をしているわけではないし俺の存在に気づいている様子も欠片もないから、少々目を離すぐらい大丈夫なのかもしれないが。今までどれだけ探しても見つからなかったあいつだ。油断はできない。

「てかあいつは何をする気だ…?」

辺りはもう暗い。つまりは夜だ。そんな中あいつは宿もとらずに博物館の周りをウロウロ。もう閉館している博物館の周りを、だ。しかもあの地味な格好ではなく、ピエロに着替えている。
…意味がわからない。

…もうすぐ仕事を予定してた時刻になる。
集合場所は、今ナッツが立っているまさにそこ。

まずいまずいまずい。

もし万が一、フェイタンとナッツが遭遇してみろ。仕事でやる気(殺る気)になってるあいつは、集合場所にいるのが俺じゃないとわかるとそのナッツの姿を確認することもなく一瞬で始末するだろう。
そんな惨劇…!絶対あっちゃならねぇ。

「って…そうか、そんときゃ俺が止めればいいだけか」

ナッツの俺の株急上昇。フェイタンの株は急降下。
最高だ。

「もうそろそろ行こうか」
「ワン」

どこか楽しげに、あの犬に向かってナッツが話しかける。
何かを始める気かと、俺はさらに気を張った。
―――が、見失った。

馬鹿な。
いくらあいつが速いとは言え、今の俺が見失うなんて。
おまけに気配も感じない。絶だ。

「やべぇ…!」

油断はしねぇと思ったはずだったのに。


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