変態注意報

「ヒナタ!」


満面の笑顔で私を呼んで飛びついてくる、彼女は私のお友達。
私とは違って何に対しても行動的で、明るくてかわいくて。


「リンちゃん、ひさしぶり」


私の憧れのあの人に、似ている人。



変態注意報16 side ヒナタ



「ほんとに久しぶりだねー今日はお休み?」
「うん、リンちゃんも?」
「ううん、私は任務帰り。さっきまでゴミ拾いしてた。腰痛い」
「ふふ、お疲れ様」


下忍になってから、アカデミーでの友達と会う機会は当然減った。
私なんか元々友達も少ないから、たまの休みもこうして一人で少し散歩するぐらいで。
だから偶然リンちゃんと出会えたのは嬉しい。


「ねぇヒナタ、ヒナタは今度の中忍試験受ける?」
「う、うん…みんな受けるって言うから…」
「そっか、私も受けるよー。もちろんナルトもね」
「そ、そうだろうね…」


ニヤリと笑ったリンちゃん。
がんばりなよ、と私の背中を軽く叩いてきた。


「ナルトに目を付けたヒナタの男を見る目は間違いなしだよ、私が保障する。だからあとは…アタックあるのみ!」
「え!リンちゃん、私は…」
「って言ってもヒナタには私みたいなことは難しいってわかってるから…」
「………」
「とにかくこの中忍試験に合格すること!」
「え?」


中忍試験と、私とナルトくんがどう関係するの?


「アレは強さや力に惹かれるタイプだからね、ナルトが合格してヒナタが不合格、なんて事態は絶対にダメーっなの!」
「そ、そうなんだ…」
「だから頑張るんだよヒナタ!一緒に合格しよーね」
「う、うん…」


…正直、私の実力で中忍なんて、絶対無理だと思う。
試験も本当にキバくんやシノくんが受けるって言うから受けるだけで、本当は怖いから、嫌だ。

たぶん…リンちゃんは、そんな私の気持ちがわかってるんだと思う。
だからこうして、なんとか私にやる気を起こさせようとしている。
でもそんな、試験を利用するような真似…


「ヒナタとナルトのゴールインのためなら、中忍試験ぐらい余裕で足掛けにしちゃいな!」
「ぐらいって…」
「なーに気張ってんの、たかが試験だよ?アカデミーでも何度も受けたじゃん」
「でもそれとこれとは違うと思う…」
「一緒一緒。ほら、そう身構えないの!」


笑ってそう言うリンちゃんは別に虚勢を張ってるわけでも何でもない。
本当にそう思ってて、それ以上には何も考えてない。

リンちゃんのそういうところを、人は間抜けだって言うけど。
私はリンちゃんのこの楽観主義、すごく素敵だと思う。
なんだか私も、気が軽くなったような気がしてきた。


「私この試験楽しみなんだー。きっとシカマルのかっこいい姿が見られるだろうし!」
「ははは…」


ふいにリンちゃんは手を挙げて、それを大きく振った。
目線の先には、電柱にもたれて立つ…シカマルくん?
まだかなり遠いけど…なんとなく、そうかな。

…リンちゃんのこと、待ってたみたい。


「楽しいと思えばなんだって楽しいし、楽しくないと思えば何でも楽しくないよ。一緒に楽しもう?ヒナタもきっと、ナルトのかっこいい姿が見られるよ」
「…うん」
「何事もさ、楽しまないと損だよね」


リンちゃんが手を振り続けていると、シカマル君も諦めたように小さく手を振り返した。
やっぱり待ってたんだ、あれ。


「じゃ、私行くね!ばいばい」


ものすごく嬉しそうな顔を私に向けてから駆けて行ったリンちゃんは、ものすごいスピードでシカマル君に抱きついた。

…あの二人、上手くいったのかな。
よかったね、おめでとうリンちゃん。


「…私、がんばるよ」


私を、ナルト君に見てもらいたい。
だからもっと、強くなりたい。

私は今まで来た道を引き返した。
そして家まで走りだす。
散歩なんかしてないで、少しでも修行しよう。

強くありたい。

きらきらした光で周りを照らす、太陽みたいなあなたたちのように。




(シカマル、楽しみだね中忍試験!)
(楽しみだなんて言ってんのはお前ぐらいだ)
(私ずっとシカマルのこと見てるからね!)
(真面目に試験を受けろ)

不純な議題、だけど正論
(あなたの言葉はいつだって)
[*prev] [next#]
[top]