変態注意報

下忍となって早半月。

毎日、いもを植えたり猫を追っかけたり子供の世話をしたりと…
思っていたより、この職は忙しかった。

ほんと、仕事舐めてましたすみません。
働くってしんどい。



変態注意報15 side リン



今日は久しぶりの休み。
私は森の中の修行場にいた。

休みの日ぐらい友達とショッピングしたり家でゴロゴロしたりしたらどうなんだと思わないでもない。
けれど私は昔から空いた時間は修行をするか本を読むかということぐらいしかしてこなかったから、結局今もこうしてるのが一番落ち着く。

身体を動かすのは好きだ。余計なことを考えずに済むから。
本を読むのもまぁまぁ好き。読めば読んだだけ、天国のお母さんが喜んでくれるような気がする。

でも…本当に一番好きなのはどちらでもない。


「シーカーマールー…会いたいよー」


私の一番好きなこと=シカマルの傍にいること。
私が今一番したいこと=シカマルに会うこと。

なら突撃すればいいじゃない!!

―――と考えるのが下忍になる前までの私だ。
今は、違う。事はそんなに簡単じゃない。

私たちは、下忍だ。
たかが下忍。されど下忍。
働く者は、忙しい。

何が言いたいかというと…私が休みでも、シカマルの方は休みなんかじゃないということ。
きっと彼は今も元気に、猫だの犬だのを追っかけているんだろう。

最後に会ったのは、いつだっけ。


「…帰ろう」


日が傾きかけてきた頃、私は的に突き刺さっているクナイを回収し、家路へとついた。
最近はカラスの声が「あほーあほー」に本気で聞こえてくる。被害妄想も甚だしい。

ストレスが溜まってます、シカマル不足ですたいちょー。
でもお仕事の邪魔なんてできないし。
お仕事できっと疲れてる彼の元に突入するのも気が引けるし…って、どうよこの健気な乙女心!


「…はぁ」


……切ない。

大体あっちの休みなんて私把握できてないのに、これからどうするつもりなんだろう。
夜這い仕掛けるぐらいしか会える機会なんてないってのに。
それが、相手の体なんて気遣っててどうすんだ…!
夜這いは度胸と強引さが必要なんだよ!シカマルだっていつでも来いって言ってくれてるんだよ!

…とは言っても。何故か我慢なんて慣れないものをしてしまう私。
乙女心って複雑。女の子って大変。

とりあえず家へ帰ったら、玄関に飾っているシカマルの写真で目の保養。
それからお手製のシカマルぬいぐるみを抱きしめて仮の栄養補給。
そしてご飯とお風呂の後は、盗み録りしたシカマルの生音声テープを聴きながらおやすみなさい。
…うん、なんか満たされる気がする。私は大丈夫。
そうだ、これからは頻繁にいのの家の花屋に通うことにしよう。
いのが店番してれば、それはつまりシカマルがお休みってことだから。
うん、そうだ、そうしよう、うわ私って天才っ――――て…

…え?


「おせぇ」


…玄関の前に、人影。
暗くて姿は見えない。でも声が―――


「シカマル?」


私は慌てて駆け寄った。


「どこ行ってやがったんだ、今日休みなんだろ」
「なんで…」
「たまたま会ったナルトから聞いた」
「いや、そうじゃなくて…」


なんでいるの?私の家の前に。

尋ねると、シカマルはそれはそれはバツの悪そうな顔をした。
それってもしかして…
照れてる?


「会いに来てくれたの?私に?」
「た、たまたまそばを通りかかったから、久々に顔ぐらい見てやるかと思っただけだ」
「な、何そのベタなツンデレ…!更に腕上げたのね素敵!愛してる!」
「何興奮してんだ」


会いに来たって言葉を否定されなかった。

どうしよう…嬉し過ぎる。
シカマルが、私に会いに来たなんて。
あのシカマルが!私に!


「シカマルも、私に会いたかった?」
「はあ?何自惚れてんだ、俺は…」
「私は会いたかったよ!超シカマル不足です!抱きついていいですか!」
「却下」
「却下するのを却下ぁ!」
「んな!?」


それこそドガァッ!とでも効果音のつきそうな勢いで抱きつくと、シカマルは盛大に尻もちをついた。
むふふ、久しぶりのシカマル補給っ。


「………ハァ、お前なぁ…」
「何?」
「…俺が不足するとか言うぐれぇなら、なんで来なかったんだよ。家でも何でも来いってあん時言わなかったか?」
「…もしかして、ずっと待ってた?」
「…んなわけねぇだろ」
「待ってたんだ…」
「おい」
「ごめんね、私シカマルがいつ休みなのかわかんなかったから…今日、休みだったんだね」
「…休みじゃねぇよ。さっきまで働いてた」
「へ…」


…仕事した足で、そのままここへ直行?


「わあああごめんねシカマルぅ!変に乙女モード発動させた私が悪かった!これからは毎日ちゃんと会いに行くよ!ちゃんと通い妻するよ!」
「毎日なんかこなくていい!」
「たまに?」
「…そうだな」


皆さん…私たちは着実に愛を育みつつあると思うのですが、どうでしょう。
だってほら、なんだかんだでこの人は私を抱きとめてくれているわけですよ。

これって愛じゃない?


「うっしっし」
「何笑ってんだ…しかも変」
「うれしーんだよー」


そろそろ認めてくれていいんじゃない?


君は私が好きでしょう?




(ねぇ、晩御飯食べてくよね?私腕によりをかけて作りますよ!)
(あーいい、母ちゃんが作って待ってるだろーし)
(うん、お母様には悪いけどそれ却下。
 さぁどうぞいらっしゃーい!)

我慢したんですがダメでした
(君の方がね)
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