変態注意報

「イルカ先生!よりによって優秀なオレが!何でこいつと同じ班なんだってばよ!」
「…サスケは卒業生28名中一番の成績で卒業。ナルト……お前はドベ!いいか!班の力を均等にするとしぜーんとこうなるんだよ」
「な…!」
「はいせんせー!なんでシカマルと私が同じ班じゃないんですか?!頭の悪い私と天才なシカマルでほら、チーム組めばきっとぴったり!」
「そうだリン、頭の悪いお前はサクラとチームでぴったりだ喜べ。ていうか自分の頭の悪さを豪語するなバカ」
「ぐっ…」


そりゃサクラと一緒なのは嬉しいけど…サスケもナルトも一緒だし嬉しいけど…でもシカマルがいないと意味ないっていうか…
とか何とかぶつぶつ言いながらリンは崩れ落ちた。机に突っ伏し、まるで魂が抜けたかのような死んだ顔をする。
俺はそれを見ながら盛大に溜息をついた。


「リン…今日の昼飯はイルカ先生のオゴりで一楽だってばよ」
「おうともさ」
「はあ!?ナルトお前昨日も散々食べただろうが!」
「せんせー私食べてませーん。だから私だけでいいんでオゴってくださーい」
「ああ!ずるいってばよリン!」


今更だが、こんなのが忍になってこの里は大丈夫なんだろうか。



変態注意報13 side シカマル



昨日、俺たちはアカデミーを卒業した。
今日からはもう生徒ではなく、皆それぞれ一人の下忍だ。

それはあの変態、小柳リンも当然例外ではない。


「サスケとサクラとナルトと一緒…サスケとサクラとナルトと一緒…喜べ…喜べ私…!」
「…何してんだお前」
「自己暗示」


バカだ。


「くそぉ…いのと浮気したら許さないからね…!」
「浮気も何も、俺とお前はんな関係じゃねぇだろうが」
「まだそんなこと言う。いい加減認めなさい」
「認めるも何もねぇっつの」


今日は、下忍としてこれから組むチームを発表された。
基本スリーマンセル。俺はいのとチョウジとで、リンはナルトとサスケとサクラと。そう、こいつのとこだけフォーマンセルだ。
そして仕組まれたかのように、こいつのチームにはこいつの好きな人間ばかりが集まっている。

けれどそれでもこいつは不満だと言う。
そこに俺がいないから。

…言っておくが当然、俺たちの関係はアカデミーの頃から何も変わらない。
俺は相変わらず、こいつの一方的な変態行為に合う被害者だ。
変わったのは、俺に対する周りの目が"可哀想"という同情の目から"イチャつくなら余所でやれ"という非難の目になったことぐらいで。


「シカマル…わかってる?私たち、もう忍になったんだよ?」
「…だからなんだよ」


突然向けられた真剣な目に、思わずたじろいだ。


「忍になったってことは、いつ死んだっておかしくない、そんな場所に身を置いたってことじゃん…」
「ああ」
「なら生きてる内に私は…たっぷりシカマルを堪能しなくちゃいけないんだよぉぉぉぉ」
「…真面目な顔して何言いだすかと思えばそれか。実はお前忍舐めてるだろ」
「いたって真面目な話です!」
「へいへい」


鼻息の荒いそいつをたしなめて、俺は時計を確認した。
もうそろそろ担当上忍との顔合わせの時間だ。あーめんどくせー。


「…私昨日すっごくお祈りとかいろいろしたのにさー…やーっぱ結局いのしかちょうはセットだったんだもんなぁ…ハァ…」
「それを言うなら、やっぱ小柳とうちははセットなんじゃねぇか。どう考えたって俺たちが一緒のチームになることなんざなかったんだ、諦めろ」
「シカマルたちと違って私は小柳の秘術は使えないから、うちはとセットだろうとなんも関係ないのに!ううー…アカデミー通ってた頃とは違って、今までみたいにいっぱい会ったりできないんだよ?きっとおはようも言えないしお昼ごはん一緒に食べたりもできないし一緒に下校もできないし…」
「当たり前だろーが。んなことでうじうじすんなめんどくせー」
「シカマルは寂しくないのー?私は寂しい!凍えて死ぬ!」
「意味わかんねぇ。…俺は別に寂しくなんかねぇよ」
「えー…」


うそだーひどーい私泣くぞーおにーばかー
幼稚な罵倒が俺を責める。苛々した俺はその馬鹿の頭を殴った。


「うっせーなめんどくせぇ…同じ里内にいるんだ、会おうと思えばいつでも会えるだろーが。お前らしくねーな、家でも何でもいつでも来りゃいいだろ」
「へ…?」


殴られた頭を抑えながらリンがぽかんと口を開ける。
その反応を見て、俺は自分のものすごい失言に気づいた。
今のって、なんか…


「それって…シカマル、私に会いたいみたい」
「ーっ!」


やっぱそう聞こえた!
あーくそ、俺は別にそんなつもりじゃ…ない、はずだ。

顔が赤くなっている気がして、咄嗟に俺は顔をそむけて歩きだした。
ちょうど俺たちの班の担当もやってきたみたいで、俺はそのままチョウジといのと合流する。
そしてさっそくいののからかいに遭った。
さっきまでの会話は出歯亀共にしっかりと聞かれてたらしい。

チッ。
こんなとこであんな話するんじゃなかった。
俺たちの周りはいつも人が遠巻きになるから気にしてなかったっつのに。


「シカマル!」
「…ああ?」
「今晩行くから!待っててね!」
「…ああ」


さっきまであんだけヘコんでやがったのに、現金な奴だ。
今晩の夕飯は、母ちゃんにあいつの分も用意してもらっとかないとな。




(今晩行くからvだってよかったわね)
(………)
(あんた調子のって手出すんじゃないわよ?
 あの子はあんなバカだから可愛いんだから。
 まだ大人の階段なんて登らせなくていいから)
(…んなことするわけねーだろ…)

ヤツの辞書に
再起不能の文字はない

(時にはそれに救われる)
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