小説(クリパー) | ナノ



「きゃああああ!」
「名前!」


源田くんのわたしの名前を呼ぶ声が聞こえる。
もうだめ、落ちる!と思った。だが、いっこうにこない痛み。うっすらと目を開けると、わたしは誰かによって落下することを免れていた。
そっと視線を上げてみると、わたしを受け止めていてくれたのは……



「大丈夫か、名前?」




赤いマントにヒーローベルト。
その姿と風貌はまさしく鬼道くんだった。わたしをお姫様だっこして受け止めている姿は、傍から見ればまさにヒーローそのものに見えるだろう。
ゴーグルの奥の瞳がすごくきれいで思わずキュンとしてしまったのは内緒にしておく。



「あっ、鬼道さんばっかりズルイ!」



成神くんが鬼道くんに向かってそう叫んだ。周りのみんなも、ぶつぶつと鬼道くんに向けて何かを呟き始める。
だが鬼道くんは微動だにせず、ずっとわたしを抱きかかえたままだった。




「あの……鬼道くん、降ろしてほしいんだけど」
「あ、すまない……」



鬼道くんに降ろしてもらい、お礼を言うと、鬼道くんの頬がちょっぴり赤く染まった。
顔を赤く染める鬼道くんは滅多に見ないため、レアだなあ、と思ってしまう。

そんな鬼道くんの後ろには、震源地でもある大野くんが未だにうずくまっていた。ドンドン!と床を叩くことは無くなったが、未だに凹んでいるようだ。
そんな大野くんの近くに五条くんが歩み寄って行く。同じく源田くんも寄って行った。



「グフフ……そんなに凹むことないだろう」
「そうだぞ大伝!元気出せよ!」

「ウワアアアアーン!昨日からいいことが無いー!みんな昨日のプレゼント回しで俺に回って来たプレゼント発表を思い切りスルーするし、フィギュアも隊長によって壊されるしー!」

「い、いやそれはだって……」



泣きわめく大野くんに、源田くんは思い切り「引いてます!」というような表情になる。
というか、どれもこれも、大野くんがいろいろと羽目をはずしすぎてるのが原因だろう。




「仕方がないですね、聞いてあげましょう。大伝に回って来たプレゼントは何です?」
「待ってましたー!まだ開けてないでござるよ!」




大野くんはごそごそとお馴染みの黄色いリュックを探る。
その中から出て来たプレゼントに、洞面くんが「あ、僕のだ!」と声を漏らした。




「え、あれ洞面くんからのなの?」
「そうなんです。まさかあの大伝先輩にわたっているなんて……」



苦笑いをする洞面くんをよそに、大野くんはびりびりとプレゼントの包装を破っていく。




そこに現れたのは洞面くんサイズのTシャツだった。




「あ……。いらなくなった服を適当にいれたんですけど……。まさか、はは」




空気が一瞬にして凍る。
誰もが必死にフォローの言葉を探そうとしていた。大野くんも、近くにいる源田くんや五条くんすらも黙ったままだった。


たぶん、みんな思ってる。

服着れないじゃんって……。
ピチピチになるだろって……。


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