BOOK AND YOUTH | ナノ


  不意討ちサンシャイン




休日は基本的に図書館にいる。だけど今日は祝日で休館日のため開いていない。そこで私はこの間のように迷子にならないよう、周囲の把握も兼ねて散策をしてみることにした。

特にあてはないので、とりあえず適当に歩いてみる。そうしてしばらくフラフラとしていると、見たことがない場所に辿り着いた。太陽をモチーフにしたようなオブジェが門に取り付けられ、いうなればお金持ちの家だ。



「…おっきいなぁ…」



まさかこんな大きい家がこの辺りに建っていたなんて予想外だった。でもきっとこんなところに住んでる人と話すことはないだろう。私みたいな一般人が関わることなんてあり得ないのだから。

少しだけ門の奥にある屋敷を見つめ、また散歩の続きを始めようとしたところで、前方からどこかで見かけたことがあるような人が歩いてくるのが見えた。
近付いていくにつれて、それが誰なのかはすぐにわかった。向こうも私を見つけたようで、一瞬動きが止まった。

これは一体どうすればいいんだろう。



「……こんにちは」

「……」



冷たい視線がものすごく痛い。
いつもはかけていない眼鏡をかけているからか、更に冷たく感じる。近くにある太陽のオブジェと目の前にある冷気のようなオーラ。なんてミスマッチ、と思ったところではっとした。

そういえばこの人、毛利さんは日輪崇拝者だった。



「あの…もしかしてここ、毛利さんの家ですか?」

「何故貴様がこの場にいる」



返事をしてくれない。



「…えっと…あの、散歩です」

「……」



毛利さんが質問に質問で返してくるから返答したのに、冷たい視線を投げ掛けてくるばかり。



「…毛利さん、何か怒ってます?」

「は?」

「ひぃっ…い、いえ、なんでもないです」



たった一言を発しただけなのに、毛利さんが言うとやたら怖い。図書館では慣れているけど、路上で一対一というシチュエーションは未だかつてなかった。
つまり、外の太陽の下で仏頂面を拝むのは物凄く恐怖だと言うことだ。太陽が丁度真上から当たり、眼鏡が反射して表情が見えなくて更に怖い。



「あの…私失礼しますね…。せっかくの休日にまで私の顔なんて見たくないでしょうし…」



これ以上毛利さんの前にいたら怒られそうな気がしないでもないので、とっとと退散するのが吉だと判断し、そう言ってから毛利さんの横を通りすぎた。が、進むことができなかった。



「…毛利さん?」

「今日は雲ひとつない晴天。日輪は高々と我の頭上で神々しく輝いている」

「え?あ、はい、そうですね」

「…今日の我は気分が良い。貴様にも茶ぐらいはだしてやろう」

「そうです…え?お茶?」

「来るが良い」

「え?え?毛利さん?」



何故か腕を引っ掴まれたと思ったら、今度は強引に今来た道とは逆方向。つまり毛利さんの家へと連行された。

これは、予想外の出来事だった。



引き摺られ気味にやたら大きな門を通り、屋敷の方へと近付いていく。
ついさっきまでは関わることなんてないだろうと思っていた場所だけに、妙に緊張する。まさかこんな形で関わることになろうとは数分前の私が知ったら驚くだろう。



「おかえりなさいませ、元就様」

「この女を客室に通せ」

「かしこまりました」



屋敷へ入った瞬間、やたら俊敏な動きの執事らしき人達が現れた。こんなドラマや小説みたいな人達が現実に現れたなんて衝撃的過ぎて、私はただただ呆けていた。
玄関は広いし部屋は多いし廊下は長いし、何より使用人はいるしでひたすら驚きっぱなしで、正直客室とやらへ行くまでに執事の人がなにを言っていたのか覚えていない。

だけど「元就様が御客人を…女性を連れてこられるなんて…!」と、驚愕していたことだけはかろうじて覚えている。


(121028)

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