朔夜



しねた。小十郎が死んでるっぽいど。









「なぁ小十郎、今日の戦もなかなかのparyだったぜ」
政宗は、自分の盃を床に置き、もう一つの空いた盃に酒をつぎ始める。とくとく、と心地良い音を立てて、少しの衝撃で溢れそうなほど並々と酒をよそわれた盃を、自分の前に差し出し床に置く。
「お前も来りゃあ良かったな、結構楽しめたぜ?ま、雑魚に違いはねぇがな」
先程床に置いておいた盃に手を伸ばし、ぐい、と一気に酒を飲み干す。へらへらと薄ら笑いを浮かべる政宗の頬は、酒が入りほんのりと赤く高潮している。そして置かれた盃の近くを人差し指で、とんとん叩いてみせる。
「小十郎、ほら、飲めよ」

返事は無い。
政宗は、拗ねた様に口を結んで、盃を手に取る。そして、無理矢理と言わんばかりに盃を突き出す。酒が、数滴溢れて政宗の手を濡らした。
「そこにいるんだろ?小十郎、俺の側にいるんだろ?」
辺りをきょろきょろと見回すも、やはり返答は無かった。
「まーた細けぇ事で怒ってんのか?わーったよ、謝りゃいいんだろ、謝りゃあ」
何度も何度も語りかける政宗を嘲笑うかの様に、夜の静寂が部屋にまとわり付く。静寂が煩い。そんな表現が良く似合う。
静寂に耐えかねた政宗の歯が、ぎりっと擦れる鈍い音を発す。

「…小、十郎…何処、だよ…」
涙を含んだ政宗の声は、空虚の中、吸い込まれて儚く消えた。

それは月の見えない、朔の夜の事。




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