かくして迷子は家に帰った | ナノ
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▼ 僕がうそをついたことがあるかい

「あ、来た来た」空閑を見つけた名前が手招きする。空閑も名前の姿を見つけ、近寄った。

エネドラの尋問の後、空閑のもとに連絡が来た。夜中の本部には技術部以外はほとんどいないため、名前はがらんとした廊下に一人で空閑を待っていた。「どうしたんだ?」という空閑に、「ちょっと頼みがあって」と名前が申し訳なさそうに笑った。

「着いてきてもらえる?」という名前の言葉を了承して空閑が後ろに着いて歩き出す。彼女の足取りには迷いがなく、まっすぐにどこかを目指していた。

歩いているルートから、先日通ったばかりの道のりであることに空閑が気付いたのは、廊下の奥の奥に来てからだった。

「とうちゃーく」

名前が止まったのは、先日空閑も呼び出された上層部の会議室。空閑は「どういう頼み事?」と入室前に聞いた。

「前と一緒。空閑くんのサイドエフェクトを借りたい」

名前は詳しいことは伝えないまま会議室の扉を開いた。中には前回のように多くの人間はおらず、広い会議室に城戸が一人座っていた。

「……遅い」

「え、時間通りじゃないですか?」

この時計壊れてるのかな?と腕時計を確認する名前と呆れた様子の城戸を空閑は見た。

サイドエフェクトを借りるということはまた尋問系か。と空閑は誰に対してだろうかと想像した。エネドラになら、先ほどしてきたばかりだ。ヒュースは口を割る事自体が難しい。

「あのね空閑くん、頼みってのは尋問をするから嘘か本当か見抜いて欲しいのね」

やっぱり。空閑は自分の予想が合っていたと思いつつ「誰の尋問?」と聞いた。

「私の尋問」

「___え?」

一瞬聞き間違いかと思ったが、名前がはっきり彼女自身を指差していたためその線は消える。

名前が「じゃあ始めようか」と空閑の了承もなしに言う。城戸は少し黙ったのち、尋問を開始する。と口を開いた。

「お前はトリガー技術のない、かつ、この世界ではない場所から来たのか?」

城戸の言葉に、空閑は耳を疑った。玄界以外にそんな場所は存在しない。父親と共に近界を旅していた空閑はそう思った。

「はい」

名前が答える。彼女の解答が、嘘ではないと空閑のサイドエフェクトが言っていた。自分のサイドエフェクトだと言うのに、自分が一番理解できなかった。

「___どうだ」

城戸が真偽を尋ねる。空閑は自分自身が信じられていないままに嘘は言ってないということを伝えた。

「…………そうか」

空閑の言葉に城戸が静かに頷いた。名前は「だから最初から言ってるじゃん」と口を尖らせる。空閑は未だこの状況が理解できず、彼らしくもなく驚いていた。

「……近界民同士庇い合っている可能性も含めて、もう一度検討する必要があるな」

「……はは、」

名前が空閑に「城戸さんって頑固でしょ」と笑いかける。さすがにこの状況では空閑は笑ってはくれなかった。

(僕がうそをついたことがあるかい いっそ嘘ならよかったんだ)

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