trick03


「こんなに肌蹴させて、誰を誘っているんです? そんなに悪戯してほしかった?」
「……全然」
「遠慮しないで」
「遠慮なんてしてな……ッ、ちょっ!」

夢早く覚めてくれ、と願う暇もなくカチャカチャと音がしてズボンのベルトが緩められる。


「たーっぷり悪戯してあげますよ」
「いや、本当にいいから、って、智紀! どこ触って!!」

さっきの晄人のときと同じように抵抗するのに簡単に押さえつけられてしまう。
胸を撫でまわしながら顔を近づけてくるから顔を背けるとそのまま耳朶に舌を這わせられた。
どんどん胸から下へと移動していく手。
すでにズボンの前は緩められていて―――。


「お菓子をくれないから悪いんだよ」

くすくす笑う声が耳元で響き、俺は無我夢中で叫んだ。


「お菓子ある! あげるから、ストップ!!!」

ぴたり、と止まる手。
俺は急いで枕元にある鞄を探った。
がそごそと必死で探してようやく指先に触れたものを掴んで智紀へと差し出す。


「お菓子だ! あげるから悪戯はなしだよ!」

取りだしたのは今朝コンビニで買ったブラックガム。
もう開封してはいるけどガムだけどお菓子には変わりない。
智紀はじーっとガムを見つめる。
ガムじゃだめなのか、と不安になった瞬間、


「ありがとう。それじゃあ悪戯はなし、だね」

と受け取ってくれた。


「来年はお菓子用意してなくっていいよ。悪戯させてね?」
「……」

そうして智紀もまた晄人と同じように拒む間もなく触れるだけのキスを落として消えていった。


「………疲れた」

立て続けにひどい目にあってぐったりとしてしまう。
もういい加減この夢覚めてくれないだろうか。
やわらかい枕に顔を埋め―――そういえばと思い出す。
晄人、智紀と出てきて、捺くんはまだだ。
順番的に考えれば次は……。


「優斗さん! trick or treat!」

元気のいい声が突然して、突然現れた捺くん。
夢だけれど捺くんに会えたことにホッとしてその腕を引き寄せた。
俺に覆いかぶさるように倒れ込む捺くんを抱きしめる。


「ね、trick or treat! お菓子くれないと悪戯しちゃうぞ?」

屈託なく笑いながら金色のウィッグを揺らし俺の顔を覗き込んでくる。


「ごめん、お菓子はもうないんだ。全部あげちゃった」
「えー?」
「ごめんね。だから悪戯していいよ?」
「そうなの?」
「うん、アリスな捺くんに悪戯してほしいな」

捺くんにならなんだって許せる。
首筋に手を回し顔を寄せてキスをして、微笑みかけた。


「悪戯していいよ。捺くんの好きなように、なんでも」
「なんでも?」
「そう、なんでも―――」



と、突然ひと際大きく鈍い音が響き渡って―――……。



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