trick04
「大丈夫!? 捺くん!」
俺は顔をあげて心配そうに覗き込む優斗さんを見上げた。
「……へ?」
「ソファで寝ていて転げ落ちたんだよ?」
俺の傍に跪く優斗さん。
「……え。あの……悪戯していいって」
「ん? 悪戯?」
不思議そうに首を傾げる優斗さんにだんだん俺の意識もはっきりしてくる。
って、待て俺!!!
いま、もしかして"夢"見てた?
しかも優斗さんになりきってた夢!?
「あ、あの優斗さん、今日って何月何日?」
なんで夢見るにしても自分じゃなくって優斗さん!?
「10月31日、ハロウィンだよ」
「……そ、そう」
「どうしたの?」
「いや、変な夢見ちゃって」
「へぇどんな?」
「あ……えっと、そのハロウィンネタだよ。おかしくれなきゃ悪戯しちゃうぞー!って、悪戯されかける……」
ああああ!
もうまじで俺なんで優斗さんが悪戯されかける夢なんて見てんだよ!!
あ。でも最後のほうはどうも俺に都合よかったよな。
俺の好きにしていいとか言ってたし!!!
「へぇ、怖い夢みたんだね?」
「……んー……よくよく考えればヤキモチやいちゃうような……終わりよければそれでいいのかな夢だったんだけど」
「どんな夢か気になるな」
「いや……大した夢じゃな……え、あ、あの、優斗さん?」
さすがに優斗さんが襲われかけた夢なんて言えないよなーっと思ってたらふと気付いた。
優斗さんの格好に。
スーツ姿がすっげぇ乱れてて、ネクタイは外されてボタン全開だし、ベルトも緩まってるし。
な、なんか首筋に赤い痕あるし。
「あ、あの、どうしたの? その格好……」
恐る恐る訊くと優斗さんは困ったように苦笑して―――。
「いやーなんか吸血鬼の格好した晄人と、神父の格好をした智紀に"trick or treat!"って言われて―――」
「……」
"俺、お菓子なーんにも持ってなくって、悪戯されちゃったんだよね"
「……」
「あ、そうだ、捺くん」
固まる俺に優斗さんは俺の顔を覗き込んで、
「trick or treat!」
って、言ってきた。
え。
なにこれ、これも夢だよね。
「捺くん、お菓子くれないと悪戯しちゃうよ?」
「ゆ、優斗さん、い、悪戯って」
「なに俺に悪戯されたいの?」
「そ、そうじゃなくって松原や智紀さんに悪戯されたって!!!」
夢、だよなー!!!!
と。
俺は必死でこの"夢"がすぐに覚めるのを必死で祈ったのだった。
HAPPY Halloween!!!
☆おわり☆
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