そのろく


二戦目ヤっちゃう?な気分になってきたけど、お風呂に入ろうかってなった。

「夜はまだ長いんだしね」

なんて笑う優斗さんに頷きながらももう一個ってチョコを含んだキスをねだる。
3粒そうやってソファの上で二人で食べて、お風呂に入ることになった。

「お風呂の準備してくるね」

ぽんと髪を撫でてバスルームに向かう優斗さんにへらへらしちまう。
夜はまだまだだけどソファでヤってもよかったんだけどな〜。
長くて甘いキスのせいで俺の息子はもう臨戦態勢だ。
きっとこの調子じゃお風呂でヤっちゃうな。
だって我慢できねぇもん。
それにしても、チョコ美味しかったな。
甘い甘い優斗さんからのキスとチョコ。
まるで媚薬みたいに興奮した。
それに薔薇一輪。びっくりだけど、すげぇ嬉しい。
いいバレンタインだなー。いままでで一番のバレンタインかも、いや絶対!

「風呂で誘っちゃおう―――……ん?」

あーーーー!!と叫びそうになって自分で口を塞ぐ。
バレンタイン嬉しいなじゃねぇよ、俺!!!
俺が用意したチョコまだやってない!!!
どうしよ。
いまさらじゃねぇ?
しかも優斗さんからもらったチョコと俺の手づくりチョコ比べると。
うーん……出さない方がマシな気がする。
ソファのそばに置いてたリュックからラッピングしておいた箱を取り出して―――ねぇな、とため息をつく。
せっかく作ったし、手伝ってくれた実優ちゃんたちには悪いけど自分で食べちまおう。
優斗さんにはホワイトデーで手作りクッキー渡すとかどうだろ?
ホワイトデーなら1カ月余裕あるし練習すればマシかもしれねぇし。
そうしよ!、って決めたところでリビングのドアが開く音がして慌ててリュックに戻そうとして箱が床に落ちる。
焦って箱掴んでリュックに突っ込もうとしたんだけど軽くパニクってるからか一回で入らなくてやべぇってもっと焦ったところで優斗さんがそばに戻ってきた。
とっさに後手にチョコ隠す。
ソファと背中の間で、渡す気はなくなったけど潰さないように気をつけた。

「どうかした?」

多分パニクって変な顔しるんだろう俺に優斗さんが不思議そうに聞いてくる。
隣に座る体温に「な、なんでもない」って誤魔化すように笑う。
どうしよ、手が動かせない。

「そう?」
「うん。あ、あの優斗さん着替え……」

もう何回も泊りに来てるこの部屋には何着か着替えを置いていってた。

「出しておいたよ」

さすが優斗さん手際いい。ちょっと時間稼ぎしたかったんだけど……。

「……ありがと。あ、あの」
「なに?」
「えー……と……。あー……え、っと、喉渇いちゃった、な?」

自分で取りに行けよ!、って感じだしいつもなら取りに行くんだけど!
とりあえずいまはお願いと上目遣い。

「コーヒーおかわり? それともコーラとかがいい?」
「コーラ!」
「わかった。ちょっと待っててね」

いやな顔一つせずに優斗さんはキッチンへと向かった。
その隙に、と急いでリュックにチョコを突っ込んだ。
グラスに氷入れてコーラついで戻ってきた優斗さんにミッション達成した俺は晴れやかな気分でコーラを少し飲むと「ありがとー!」って抱きついた。
そんな俺を抱きとめた優斗さんがぽんぽんと頭を撫でてくれる。
なんで頭を撫でられるだけですっげー気持ちいいっていうか心地いいっていうか癒されるんだろ。

「優斗さん、好きー」
「俺も大好き」

あー早くお風呂入ってイチャイチャしてぇ。
お風呂でっていうのがまた楽しいんだよなー。

「捺くん」
「なに〜」
「さっきなに隠してたの?」
「……」

え、と引き攣った顔を上げる。

「なにも、隠してないよ……?」
「本当?」
「……う、うん」

至近距離でまっすぐ見つめられると気まずい。
いや、優斗さんに作ったものだから渡せばいいんだろうけど、やっぱり手作り感あふれるチョコを思い出すと微妙な気がするし気恥ずかしいし。
でも―――距離がもうちょい縮まって額同士がぶつかって、視線を絡ませながら、

「俺には秘密?」

なんてさびしそうに言われたら、言われたら……。
誤魔化せるわけねぇじゃん!!

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