そのなな


「ち、違う! ただ、その……ちょっと恥ずかしくて」
「なにが?」

優しく促されて、俺はしぶしぶ身体を離すとリュックからチョコを取りだした。
ちょっとだけ歪んでるリボンのかかった箱を差し出す。

「……これ、バレンタイン。優斗さんに」
「ありがとう。開けていい?」
「うん……。でもあのね、味は大丈夫だと思うんだけど、形はちょっと……」
「……手作り?」

うん、と力なく頷く俺の目の前で優斗さんの長い指がラッピングをほどいて箱を開ける。
箱の中身は6個入りのチョコ。
丸くなってるようでなってないようなトリュフチョコ。

「えっとこれがナッツいりでこれが普通ので、これが洋酒入りの……」

一応説明してみる。
味は本当まぁまぁだと思う!
だって実優ちゃんたちと一緒に作ったんだし。
優斗さんはじっとチョコを見つめてひとつ手に取った。
俺が作ったチョコが口の中へ入っていくのをドキドキして見守る。
いま優斗さんの口の中で俺の作ったチョコが溶けていってんのかな!?
妙にむず痒い気分でいたら、ふっと柔らかく優斗さんの表情が緩んだ。

「美味しい」
「本当?!」
「うん、すごく美味しい」

微笑む優斗さんは嘘ついてる様子なんて全然なくてホッとする。

「よかった……」
「本当に美味しいよ。いままで食べたチョコの中で一番美味しい」

そんな大げさな〜って照れて笑っちゃう俺は一瞬で優斗さんの腕にとらわれて唇を塞がれた。
ほんのり洋酒の匂いが混じったチョコの味が咥内に広がる。
さっきしてたキスよりもずっと情熱的で深くて、スイッチ入ってるよなって感じのキス。

「本当に嬉しい」

キスの合間に囁かれて、心底そう思ってるって伝わってくる眼差しで見つめられてきゅんとする。
止まらなくなるキスしてるうちに気づけばソファに押し倒されて遠くでお湯が張り終わったことを知らせる音が鳴ってるのが聞こえてきた。

「……優斗さん、風呂は?」

俺の身体に触れだしてる手にぞくぞくしながら訊いてみる。
優斗さんは悪戯気に目を瞬かせると俺の唇を舐めてチョコより甘く囁いた。

「捺くんのチョコ食べたら捺くんも食べたくなったんだ」

食べていい?
そんなん熱っぽく言われたら、

「いっぱい食べて?」

ってしか返事できねーだろ!
そして俺たちはソファで途中チョコ食べつつな甘い熱に溺れていったのだった。


ごちそうさまでした!


☆おわり☆

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