そのに ― 14日


「美味しかった! マジでウマかった!!」

映画館へと向かいながら俺はもう何度目かわかんねぇくらいに「うまかった」を連呼してた。
11時ごろわざわざ車で迎えに来てくれた優斗さんがお昼にとお寿司に連れてってくれた。
しかも回らない寿司屋!
優斗さんが行きつけらしいその寿司屋さんで食べた寿司はマジでめっちゃくちゃうまかった!
やっぱり回ってる寿司とは違うね!、なんてデカイ声で言っちゃったりしたし。

「気にいってくれてよかった。また行こうね」

いつでも連れていくよ、と微笑む優斗さんに大きく頷く。
それから映画館に辿りついてポップコーンや飲み物を買いこんで映画を見た。
3時間近くって長かったけど展開が予想できなくって思わず前のめりになって見ハマった。
見てる最中はずっと優斗さんと手を繋いでたから俺が動いたり驚きで思わず力を込めたりするたびにハッとして優斗さん見て、優斗さんは楽しそうに目を細めて、俺も顔がデレっと緩んで映画に集中して、を繰り返していた。
見る前は期待半分だったけど映画館を出るときにはかなりテンションが上がってた。

「DVD出たらまた見ようよ! すっげー面白かったね!」
「そうだね。この前見たいっていってた映画のDVDも届いてるよ。それも見ようね」
「うん!」

今日何の映画を見に行くか決めてたときに俺が見たかったけど見逃して見れなかった映画のDVDが発売になるからとすぐに優斗さんが注文してたのは先週のことだ。
優斗さんって本当優しいっていうか甘いよなぁ。
甘やかされてるのがくすぐったくってへらへらしちまう。
帰ってからDVD見ようか、なんて考えてたらふと思い出した。
以前似たようなことがあったなって。
ちらり、優斗さんを見上げる。

「どうかした?」

すぐに気づいた優斗さんが訊いてきて、上目遣いに見つめてみた。

「ほら、優斗さんと二回目に会ったときのこと覚えてる? 映画見て、それでそのあと優斗さんちにDVD見に行くことになったの」

もう二度と会うこともないだろうなーって思ってた優斗さんからランチの誘いがあって、映画見て。
そしてその映画の前作のDVDを持ってるっていうから優斗さんちに行って二回目のエッチしたんだよなー。
もう半年前にもなるってのが信じらんねぇ。

「……覚えてる。あのときはごめんね」

懐かしいなぁって思っただけだったのに何故か優斗さんは謝ってきてきょとんとした。

「なにが?」
「……いや……その……手を出すつもりはなかったのにあの日……その二回目を」

目を泳がせる優斗さんが妙に可愛くて、俺は人目も気にせずそっと優斗さんの手を握った。

「謝る必要ないよ。だって優斗さん俺に一目惚れしてたんだよね? そのころから好きでいてくれたのなら問題ねーし、それに俺も別にイヤじゃなかったもん。だからいい思い出、だよね?」

ニッと笑いかけると優斗さんは俺の手を握り返して嬉しそうに微笑んだ。
その笑顔見ると―――すっげぇキスしたくなってくる。
映画のあとはドライブでもしてディナーして優斗さんちに泊る予定だったんだけど。

「ね、優斗さん。夕食やっぱり優斗さんちでとらない? 俺、DVD見たいな」

むらむら沸き上がってくる熱に、あのときみたいに、と言いながら意識してねだるように見つめる。
優斗さんは一瞬止まって、

「いいよ。帰ろうか」

すぐに目を艶っぽく輝かせて、もう一度強く俺の手を握りしめた。

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