あなたへ贈るチョコレート☆2


「……え、これ」

俺は思わず呆然としてそれを見つめた。
真っ白な皿に乗せられた四角い箱は明らかにチョコレートだ。
蓋にはピンク色のこれも多分チョコレートで作られた薔薇。

「あけてみて!」
「でも」

チョコレートの箱には細工が施されていて触るのももったいないくらいで、指紋がついてしまったらと思うと手がでない。

「いーからいーから。だってこれ優斗さんのものなんだし。開けないと中のチョコ食べれないよ?」
「うん……」

でもやっぱり触るのが……と悩みながらもそっと蓋をあける。
中には6種類のチョコレートが入っていた。
赤いハートや、綺麗なデザインの艶やかなチョコレート。

「美味しそう。これ高かったんじゃないの?」

中身だけでなくチョコが入っている器までもがチョコレートで出来ていてつい聞いてしまう。

「んー、気にしない気にしない! まー予想より失敗しちゃってさ、結構チョコつかったけど」
「……え。これ、もしかして手作り?」
「そうだよー。結構すごくね? 俺、パティシエなれるんじゃねーのって出来でしょ? 初期作はダメダメだったんだけどね」

そうだ―――もらう直前まで、手作りなんじゃないかって気がしていたんだ。
毎日仕事から帰ると甘い匂いがしていたし。

「すごいよ、本当に。お店にあってもおかしくないよ」

自信ありげに、だけど少し照れくさそうに笑う捺くんを引き寄せた。

「ありがとう」
「どういたしまして。優斗さんがくれたチョコより味は落ちるだろうけど愛情たっぷりだから」
「味も捺くんのが一番だよ」

食べなくてもわかる、と言えば捺くんは声をたてて笑いながら手作りのチョコを一粒手にした。
綺麗な四角いチョコの上には鮮やかな赤い色が添えられている。

「はい、どうぞ」

あーん、と促されるままに口を開けた。

「―――……美味しい!」

本当に素直に言葉が出た。
わりと洋酒のきいたチョコレートはあっという間に溶けてなくなる。

「へへへー。優斗さんの好きなブランデー使ったんだよー」
「うん、すごく香りも風味も出てて美味しい」

お世辞なんかじゃなく、俺が買ってきたものよりも美味しかった。

「よかった! こっちはね、ホワイトチョコのプラリネ」

もう一粒、と捺くんが口元へ持ってきてくれる。
それを口で受け取って味わう。

「……捺くん、本当にお店で売れるよ」
「まじで? やった! でもさ、これは優斗さん専用チョコだからなー」

優斗さんの好みに合わせてチョコ選びからしたんだよ。
そう得意気にする捺くんが可愛くて腰をもっと引き寄せて唇を寄せた。

「―――ん」

チョコよりも甘い捺くんの咥内を犯す。
お互いチョコを食べてたこともあっていつも以上に甘くて溶けそうな気分になる。

「……すごく嬉しいよ。本当にありがとう」

きっとものすごく練習したんだろう。
それが嬉しくて感動して、ぎゅっと捺くんを抱きしめた。

「優斗さんもてもてで毎年すっげーチョコたくさんもらってくるから、俺の超本気本命チョコで応戦してみたんだよ」

目を悪戯気に輝かせて口角を上げる捺くんに、思わず笑みが漏れる。

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