Mother's Day B


わりとビュッフェの料理はうまくて、美味しいものと一緒に会話は弾んでいた。
主に俺以外、だけど。
……なんなんだ、いったい。

「優くんセンスいいから見たててもらった洋服いっぱい買っちゃったわ」

うふふーて感じで料理食いながらお袋は自慢気に喋ってる。
それに姉貴や親父たちが「いいなー」とか「ゆ、優くん今度私とも……。ほら来月は父の日だしね」なんて言ってる。
お袋や姉貴はともかく、親父まで頬染めて言うな。
つーか、俺だってしょっちゅう買い物行くし!
服見たててもらうこともあるし!!
って、本当になんで家族にヤキモチやかなきゃなんねーんだよ。
―――でも……別にいいんだけどさ。
優斗さんは楽しそうだから。
ただやっぱ俺も優斗さんと一緒に過ごしたかったなー、なんて俺本当末期かも。
優斗さん好き病末期。
そんなくだんねーこと考えてたら、お袋が一際大きな声を上げた。

「あ! そうだわ。今度は旅行行きましょうよ。家族旅行」
「行きたい!!」
「いいですね」

名案とばかりに言いだしたお袋にみんなが頷く。

「どこ行くんだよ」

旅行?
面倒くさい。
だいたい家族旅行なんて、ずいぶん行ってないし、なんでいまさ―――……ら。

「温泉とかいいじゃない」
「温泉行きたいー!」
「湯治したいねぇ」
「お父さんそんな休みとれないって」
「美味しいもの食べたいわあ」
「どこかいいところないか調べますよ」
「本当? ありがとう。いつ頃がいいかしら」
「やっぱり夏休みかな?」
「そうだねー」

トントン拍子に進んでいく旅行話を聞きながら俺は、席を立った。
ちらり、と優斗さんが俺を見上げる。

「肉、取ってくるね」
「うん」
「―――旅行行くなら、遊園地も」

あっという間に空になったプレート。
俺は二戦目をするべく料理を取りに行こうとテーブルを離れる寸前、そう言った。
すぐ背を向けて歩き出す。と、数秒後お袋たちの爆笑が響いてきた。

「遊園地だって!」
「小学生だったかしらね」

うっせー!
ゲラゲラ響いてくる声に他人のふりを決め込み、料理スペースに向かう。
肉メインでいろいろプレートに乗せながら、遠目にテーブルを見た。
傍から見ても楽しそうな仲がいい家族で。
それ眺めてたら、なんか、バカみてーなヤキモチが別のものに変わってく。
―――俺ってまじで馬鹿だな。
お袋と優斗さんのやりとり見て覚えた違和感。
"家族旅行"の計画発動で、その正体がすとんと胸に落ちてきていた。

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