Mother's Day A


ババ抜きやら大富豪なんかして家を出たのは5時過ぎだった。
今日の夕食はお袋のでリクエストでディナービュッフェ。
食べまくりたい!、なんていう食い気満載の理由だ。
店について店員に案内され席に向かうと、もう優斗さんとお袋は到着していた。

「……」

仲良さそうに喋っているふたり。
お袋は童顔だから―――こうして傍目から見るとカップルに見えなくもない。
ほんっとすっげー心狭いけど無意識に口が尖ってしまってるのに気づいた。
近づいていくと優斗さんたちが俺たちに気づいて軽く手を上げる。
目が合ってへらって顔が緩んだ。

「楽しかった〜?」

姉貴がお袋に声かけながら席につく。
お袋の横は親父、そして姉貴とむっちゃん。
俺はもちろん優斗さんの隣に座った。

「もう最高よ〜!」
「……お疲れ様、優斗さん」

満面の笑みで興奮したように叫ぶお袋にため息つきながら、優斗さんにこっそり声をかける。
優斗さんは「とても楽しかったよ」ってすっげー笑顔。

「……ふうん。よかったね」

お袋と姉貴がきゃーきゃー言ってるのがうるさくて、遮るようにちょっと声大きめに出した。

「腹減った! 料理取り行かねーの?」

あー本当今日の俺ってすっげぇガキ!
内心呆れるけど優斗さんとデートとか羨ましいしヤキモチやくっつーの!

「そうね。まずお料理ね!」
「たくさん取っちゃうわよー!」

一気にお袋と姉貴が戦闘態勢に入るように拳を握りしめて料理が並んでいるコーナーへと向かっていった。

「俺たちもたくさん食べようね」

優斗さんが目を細めて俺を促す。

「うん!」

笑顔で頷いて俺たちも料理コーナーに向かった。
料理コーナーには色とりどりの美味しそうな料理がたくさん並んでる。

「肉食いたい!」

ステーキを焼いてくれるコーナーがあって、俺はすかさずそこに向かう。

「美味しそうだね」
「これ何枚でも焼いてくれるのかな」
「多分大丈夫だと思うよ」

優斗さんの言ったとおりにシェフが確認してきたから「4枚で!」って返事したら優斗さんが隣で吹き出してた。
優斗さんは1枚。

「それだけでいいの?」
「うん。様子見でね」
「俺たぶんずっと肉食ってる」

可笑しそうに笑ってる優斗さんと他の料理も見ていく。
親父とむっちゃんは皿に山盛りで、姉貴はまだ最初だってのにデザートまで取っていた。
俺たちもそれぞれ皿にたくさん取って席に戻った。
所狭しとテーブルに乗った大量の料理。
一体何人前あるのかなーってくらいの料理を眺めながらそれぞれ「いっただきまーす」って食べ始めた。

「あっ、スープ取ってこようって思ってたのに忘れてたわ」

さっそく肉に食いついていた俺の耳にお袋の呟きが聞こえてくる。
視界の中でお袋が立ちあがりかけて―――

「お義母さん、俺ので良ければどうぞ」

って、優斗さんが自分の分を渡した。

「いいの?」
「またあとで取りに行きますから」
「ありがとう、優くん」

にこにことやり取りしてる二人。

「……」

甘やかさなくてもいいのに―――って思って、ふと違和感を覚えた。
なんだろう?
でもよくわからなくてまた肉を食いはじめた。

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