Mother's Day @


「え!? ふたりっきりで!?」

今日は母の日だ。
俺は別にどーでもよかったんだけど、俺と優斗さんのことをカミングアウトして初めての母の日。
優斗さんがちゃんとしなきゃだめだよ、って言ってプレゼント持って実家に来ていた。
そしたら、だ。

「そうよ〜。母の日だから! ねー、優斗くん」

なんだその服。
いまから結婚式でも行くのか、ってくらいにオシャレしてメイクばっちりのお袋が優斗さんに腕組みしてる。

「俺でよければお付き合いします」

お袋の言葉に笑顔で頷く優斗さん。
いやいやいやいや! なんで腕組んでんだよ!
なんで二人でランチに映画行くんだよー!!
いきなりな展開に俺の気持ちはそのまま声に出てたらしくって、お袋からデコピンされた。

「うっるさいわねぇ。今日は母の日なんだからいいでしょう。あんたは留守番よ!」
「はぁ!? 俺も行く!!」
「やーよー。優斗くんとデートなんだから邪魔しないでよね!」
「はー!?」
「捺、うっさい。いってらっしゃーい。またあとでね〜」
「はーい」
「じゃあね、捺くん」

お袋に食ってかかろうとしてたら姉貴に頭叩かれて、ムッとしたらあっという間に優斗さんとお袋は家を出ていってしまった。
遠ざかるエンジン音に口尖らせてリビングに戻る。
ダイニングテーブルでは親父が昼飯食ってて、テレビの前では姉貴とむっちゃんがイチャイチャしながらお菓子食ってる。

「……くっそー」

優斗さんとふたりでプレゼント選んでわざわざ来たっていうのになんつー仕打ちだ!
優斗さんの好意を逆手にとってデートだなんてお袋め〜!
ブツブツ言いながらソファに腰下ろして姉貴たちの食べてるお菓子を横から取って食う。

「ちょっと! 勝手に食べないでよねー!」
「うっせー」
「やーねー、心の狭い男って! ねー、むっちゃん!」
「俺は心広いよー、りんちゃん」
「うふふ、知ってるー!」
「……」

うぜー、このバカップルちょーウゼェのですが。
姉貴たちのどーでもいい会話をスルーしてソファにごろり横になってテレビを見る。
一応夜は優斗さんとお袋と合流してディナーってことにはなってるけど。
イヤ別にヤキモチとかじゃないけど、でも俺の優斗さんだしー!
なんか不満っつーか納得できなくてため息ついてたら―――頭になにかがぶつかってきた。
ぽたっと落ちてきたのは苺みるくキャンディ。

「親孝行させてあげると思って、ちょっと我慢しなさいっつーの」

顔上げれば姉貴が投げてきたらしく俺の方を見てた。

「優斗さんとデートさせてやるのが親孝行かよ」

口尖らして言えば、姉貴はわざとらしい大きなため息をついた。

「ガキ」
「は?」
「りんちゃん、そんないい方しちゃダメだよー。三人でゲームしよう! ね?」

久しぶりに姉弟ケンカ勃発な空気を察してかむっちゃんが俺と姉貴の間に割って気の抜ける笑顔で提案してくる。

「よし! ババ抜きでもするか! 母さんいないからババ抜き! なんてなー!」
「「「……」」」

そしてメシ食ってた親父がどうでもいいこと言ってきて―――夕方出かけるまで何故かトランプ対決が始まったのだった。

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