Sweet Birthday 2


窓際の席でハンバーガー食いながら携帯を弄る。
優斗さんにメールしようか悩む。
でもって俺の鞄の横に置いてる無駄に仰々しいデパートの紙袋のしょぼいプレゼントを横目に見た。

「……どうすっかなぁ」

せっかく買ったんだから今日渡したい―――ような気もするけど、仕事忙しいのに渡すだけで会うってのもなぁ。
気を使わせそうだし。
迷いながらも数口でハンバーガー食べ終えてコーラ飲みながら、結局悩む。
つーか……なんで俺こんな悩んでんの?
別に今日優斗さんの誕生日だからって俺がぐだぐだ迷う意味ねぇし。
椅子の背もたれにダラーっともたれかかってため息。
ただなんとなく実優ちゃんがお祝いの料理作ってあげてるのに、俺がなにもあげれな―――……。

「……ん? いやいや、じゃなくって! 単純に祝いたいし! ひとりでも祝うひとは多い方が普通嬉しいだろ? 俺なら嬉しいもん! そういうことだよ!」

そうそう、とひとり喋ってウンウン頷いてたら向かいの席に座ってるオッサンからすっげぇ胡散臭そうな目で見られた。

「……」

気まずさを誤魔化すように音たててストローでコーラを一気飲みする。
ぐだぐだ悩んでもしょうがねぇし、プレゼントは買ったんだし。
ゴミ片づけてプレゼント持って週末まで待つか迷いそうになるの振り切って、優斗さんのマンションに向かうことにした。
プレゼントだけ郵便受けに入れておいて、で、おめでとうメールしておこう。

「おっし! 行くか!」

週末に会ったとき改めてお祝いすればいいよな。
店を出て、ちょっと肌寒くて首竦ませながらしょぼいプレゼントだけど喜んでくれるといいなぁって思いながら駅へと向かった。


―――そして、数十分後、着いたわけだけど。

「……入らねえし!!」

郵便受けに入れようとしたプレゼントが入らない。
紙袋から出して入れる?
でもそうしたらリボン崩れそう、ていうか崩れる!
ハンカチだけだけど箱に入れてもらってちゃんとラッピングしてもらったから綺麗な状態で渡したいんだよ!
男のくせに細かいかもしれないけど一回りも大人な優斗さんにしょぼいはしょぼいにしても変なのあげたくないっていう妙な男のプライドっていうか。
紙袋から出せばいいけど出したくない。

「……くっそー!」
「……捺くん?」
「……」

紙袋の底が広がってるからだめなんだよな。ラッピングにあわせて畳んでみれば―――なんて考えてたら。

「……」
「どうしたの?」

後ろから名前呼ばれた。
優斗さんのマンションの郵便受けの前で俺の名前を呼ぶ……のが誰か、なんて決まりきってる。
恐る恐る振り向くと当然優斗さんが立って不思議そうにしながらも笑顔で俺を見ていた。

「……こ、こんばんは」
「こんばんは」

とっさに言葉が出てこなくって間抜けに挨拶。いやでも挨拶大事だし!
優斗さんは可笑し気に目を細める。
まさかこのタイミングで会うなんて思ってもみなかった。
いやていうか今何時!?
8時回ったくらい?
え、早くない? もっと遅いのかと思ってたんだけど―――。

「どうしたの、今日は。連絡くれてたっけ?」
「あ、えと、た、たまたまー」

あたふたしたたら優斗さんの視線が俺の両手を行ったり来たりした。
俺の右手には紙袋、左手にはラッピングされたプレゼント。
戸惑ったような驚いたような表情が向けられて、もう感づかれてるだろうからプレゼント紙袋に仕舞って優斗さんに歩み寄った。

「あの実優ちゃんから優斗さんが今日誕生日だって聞いて。それで、誕生日プレゼントを届けようかなって……。でも俺いま金欠でたいしたプレゼントはあげれないんだけど。えっと、その優斗さん」
「捺くん」

会うのが予想外すぎて妙にテンパってパニクっていい訳みたいなことをつらつら言ってたら優斗さんの優しい声が遮った。

「……はい」
「部屋、上がらない?」
「……はい」

一瞬いいのかな、仕事で疲れてるんじゃねぇのかなって思ったけど、気づいたら頷いてて。
優斗さんの手が自然に俺の手をとって引っ張って、優斗さんの部屋にお邪魔することになってしまった。


***

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