ともくん、お誕生日だよ!C


「あー……捺くん。まぁそのー」

今日は智紀さんの誕生日。
もちろんプレゼントは用意してたんだけど、捺くんと電話で喋ったときに、

『智紀さん、千裕くんのことツンデレ萌えっていつもいってるよ。たまにはデレばっかりにしてみて驚かせちゃえば。ほら今度の誕生日とかさー。どうせツンデレたって最後は智紀さんのペースに巻き込まれるんだろうし、なら千裕くんが崩しちゃうのもいいんじぇねーの』

っていう、正直別に普段ツンデレってるつもりもなかったけど―――捺くんのいうとおり最終的に流されるなら最初からこっちが乗っかってみるのもいいかなぁと思った。
それでいまの流れなんだけど……。

「もしもーし、捺くん。こんばんは」
『……げ、智紀さん』
俺がなんて返そうか迷ってるうちに俺のスマホを智紀さんが取りあげて出てしまう。
『お誕生日おめでと』
「ありがとう。捺くんが千裕に素敵な提案してくれたおかげで至れり尽くせりだよ。これからもっとご奉仕してくれるらしいから楽しみだな」
『……』
「……」
『――』

捺くんがなにか喋ってるみたいだけど今度ははっきりとは聞こえてこない。
智紀さんは笑って相槌を打ち俺にスマホを手渡した。

「……捺くん?」
『千裕くん、なんかごめんね?』
「いや、いいよ」
『まじで大丈夫? ……無理難題されねーかな? ×××なのとかさ?! ××って×××なのとか!?』
「……」

電話の向こう側で『捺くん……』って優斗さんの窘める声が聞こえてきた。
―――正直確かに不安はあることはあるけど。

「……大丈夫だよ。今日は誕生日だし。俺もたまにはなにかしてあげたいと思ってたから」

言ってる間にすっげぇ本当に痛いくらいの視線を感じた。
あーもう絶対ニヤニヤしてんなってのが見なくてもわかる。

『……千裕くんってやっぱ大人だね! いやーすごいよ、変態プレイに負けるな! 頑張ってね!』

あと今度どんなプレイしたか教えて、って捺くんは言って……電話を切った。
スマホをテーブルに置いて深呼吸がてらにため息。
向き直るのイヤだけどしょうがない。
智紀さんのほうを見ると、途端に視界が暗くなった。
額をこつんと俺の額につけてくる。

「ね、ちーくん」
「なんですか」
「キスしてくれる?」

予想通り―――智紀さんの顔は緩んでる、けど―――。

「いいですよ」

でもすっげぇ嬉しそうだし、今日はこの人が生まれてきた日だからたまにはいっかなってキスして。
そして求められるままに応えた。
それはとくに難しいこともなくて……意外に。

「ちーくん」
「なんです」
「次はさ――……」

楽しかった―――なんていうのは秘密にしておこう。


【おわり】

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