ぱんつの日 @


「……なんだこれ」

風呂から上がってバスタオルで髪と身体と拭いて、服を着ようとしたらパンツがない。
いや、あるにはある。
けど、それは俺が普段はいてるトランクスの4分の3以下あるのかないのかってくらいに小さいもので、しかもぺらぺらで紐がついている。
薄いブルーの……紐パン、女性用下着だ。

「……ありえない。あの人バカすぎるだろ」

会社経営してるし、頭もイイってこともわかってる、社交術に長けてるってこともわかってる。
俺みたいなガキが太刀打ちできない大人だってことは十分にわかってる。
それでも今俺ははっきり言える。

「本当にバカじゃねーのか……」

頭を抱えてため息をついた。

『ちーくん、今日8月2日はパンツの日らしいよ』

二時間ほど前、外で夕食をとっていたときにそう言ったのは当然ながら智紀さんだ。
どうしてパンツの日なのかと理由を教えてくれて『へー』と興味なく返した俺。
てっきりそこから下ネタへと走るのかと思えば、

『いろんな記念日があるね』

と、それだけで話は終わった。
だからパンツの日なんてこときれいさっぱりいまのいままで忘れてた。
俺が着替えるはずだったパンツがなく、紐パンが置いてあるのは紛れもなく智紀さんの仕業だろう。
あの人しかいない。
だっていまは智紀さんのマンションにいるんだし。
深いため息をついて紐パンを手にしてみた。
女はすごいな、こんなもんで足りるのか?
面積狭すぎな紐パンは男から見てみれば心許ない。
それにしても―――。

「智紀さんてこういう趣味なんだ」

最初に会ったときバイだって言ってたし女性経験は豊富そうだし……。
その中でこういう下着を身につけてた人もいるんだろうな。
智紀さんのことだから絶対相手は美人だったはず。

「……」

紐パンを元に戻してどうしようか悩んで結局は腰にタオル巻いただけで出ることにした。
ノーパンで短パン履くのもいやだし、直接返してもらおう。
深いため息をもう一度吐き出してバスルームを後にした。

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