ともくん、お誕生日だよ!A


「ちーくん、今日は優しいね」
「智紀さんの誕生日ですから」
「なるほど」

頷きながらもなにか考えている様子の智紀さん。
何考えてんだろうか、どうせろくなことじゃないだろうけど。

「ね、ちーくん」
「なんですか」
「キスしてほしいな、生クリームたっぷりのあまーいキス」

女の子ならすぐに落ちるんじゃないかってくらい、あんたの笑顔のほうがよっぽど甘ったるいよって感じだ。
智紀さんは生クリームを指ですくって俺の口元に持ってくる。

「……」
「もし」

智紀さんが目を眇めて口を開きかける。
それを遮るように智紀さんの指を咥えて生クリームを舐め取る。
そして智紀さんへと身を乗り出してキスした。
俺から舌を差し込んで甘い生クリームの味をわけるように舌に舌をこすりつける。

「……どう、ですか」

俺から舌いれるとか……めったにないことだし、訊いてみればワンテンポ遅れて笑う。

「おいしー。ちーくんスパイスプラスでさらに美味しいよ」
「……俺スパイスってなんですか」

相変わらず意味わかんねーし。

「ね、ちーくん」
「……」

手招きして隣にこいと言ってくる智紀さんに先の展開なんてわかってる。
それでもそばにいって、俺はなにか言われる前にケーキのイチゴを取って食べさせてあげた。

「美味しい」
「評判のいいケーキ屋らしいですよ」

そして俺からまたキス。
ほんの少し驚いたように智紀さんは俺を見てた。

「なんか今日のちーくん素直だね」
「いつもですよ」
「そう? いつもはツンデレだろ」

悪戯を思いついたように薄く笑いながら智紀さんが俺の腰に手を回してくる。
引き寄せられて俺は智紀さんの膝の上へ。

「重くないですか」
「平気平気」
「ならいいんですけど」

智紀さんのほうが身長は少し高いけど同じ男だしマジで重くないのかなっていつも思うんだよな。
でも涼しい顔してるし本人が嬉しそうだからいいんだけどな。

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