ともくん、お誕生日だよ!@


「お誕生日おめでとうございます、智紀さん」
「ありがとう、ちーくん」

テーブルに並べた手料理。
一応智紀さんの好きなものを作ってみた。
でも普段そんなに料理なんてしないから味の保証はしないけど。
ケーキは市販のやつだしな。

「すいません、たいしたものじゃなくて」
「ちーくんが俺のために作ってくれたんだから御馳走だよ」

満面の笑みの智紀さんにほっと溜息をつく。
イヤでも本当にたいした料理じゃないんだよな。
辛いもの好きな智紀さんにキーマカレーとタンドリーチキンにサラダっていうメニュー。
一応一度練習がてらに作ってみたから大丈夫だと思うけど。

「いただきまーす」
「いただきます」

手を合わせてそう言ってみたものの、何故か智紀さんは手をつけない。
不思議に思って視線を向ければ期待に目を輝かせてる。

「ね、ちーくん」
「なんですか」
「あーん、してほしいんだけど」
「……」
「ほら、俺今日誕生日だし」
「いいですよ」
「だから―――、え」
「はい、あーん」

キーマカレーをスプーンですくって智紀さんの口元に差し出す。
智紀さんは少し不思議そうにしたけどすぐに食べて「ウマい! まじで美味しいよ、ちーくん」と笑顔を浮かべた。

「そうですか。よかったです」

俺も一口食べてみて、この前作ったときよりも美味しくできていたから安心した。

「ね、ちーくんちーくん。もう一回あーんしてよ」
「いいですよ」

それから言われるままに俺は智紀さんに料理を食べさせてあげた。
他愛ない会話も楽しんであっという間に間食。
ケーキにロウソクたてて火をつけて、

「智紀さん、消していいですよ」

一応簡単にバースディソングも歌ってあげた。

「うわーなんか子供に戻ったみたいだね」

笑いながら智紀さんは火を吹き消した。
すかさず誕生日プレゼントを渡して、ケーキ。

「ちーくん」
「はい」

最後まで言われないうちに今度はケーキを食べさせてあげた。

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