18


自分の状態がどうかなんて自分がよくわかってる。
男だし、そりゃひとりで抜いたことなんて何回だってある。
適当にエロ本見たりAV見たり……重ねたりして……適当に抜いて、虚しくなって。
欲は吐き出してもたいしてスッキリするわけじゃない。
シてるときだけ、それなりに気持ちよくはなるけど。
気持ちよくはなっても、それは生理現象でしかなくて。
こんな―――。

「っ……ぁ、っ……」
「気持ちいい?」

他人に見られてるのに、萎えるどころかいつも以上に敏感に脈打ってる半身に愕然とする。
だけど手は止められなかった。
俺を見下ろす智紀さんの目に逃れることができずに、羞恥はあるのに、なのに煽られる。
扱く半身から先走りが溢れてるのは知ってる。
俺の指を濡らすそれを半身に絡めて動かして、滑りよくなってくちゅくちゅと音が立つ。
恥ずかしくて、情けなくてたまらない。
だけど俺の半身は興奮してて、漏れる呼吸も荒くなるばっかりだ。

「俺に触られるより気持ちよさそう」

わざとらしく拗ねるように言って、笑いながら智紀さんが身体を起した。
寄せ合ってた身体が離れて、俺の痴態が晒される。
とっさに動かしていた手を止め、離せばすぐたしなめられた。

「だめだよ。ほら、俺に見せてよ。千裕がひとりでシてるの」
「……っ、無理ですっ」

でも素直に再開できず身体を起こして背を向けた。
身体を寄せ合っていれば直接扱いてるところを見られることはないけど、全部晒されてそれでもできるほど度胸はない。
身体は疼く。けど、欲情を上回る羞恥にうろたえていると後ろから抱きしめられた。

「しょーがないな。じゃあこうすれば少しは恥ずかしくなくなるでしょ」

後ろから抱きしめられたまま、俺の手を掴んで俺の半身に導く。

「こうしてれば俺からはあんまり良く見えないし。ね?」

俺って優しい、くすくすと笑う声が耳に響いて、どこが、と言いたくなった。
優しいやつがひとりでシろなんて言うはずない。
だけど添えられた手に促されるようにまた自ら手を動かしてしまったのは、俺を抱きかかえた智紀さんの熱い塊が腰に押し付けられてるからだ。
布越しにだけど伝わるはっきりとした硬さ。

「ちーくん、シてみせてよ」

早く、と首に唇が触れてきて吸われる。
やっぱり今日の俺は絶対に変だ。

「ひとりでシたとき俺のこと思い出してちゃんと触った?」
「……っ……く」

腰に感じる硬い熱と悪戯に触れる唇と抱きしめる腕に、手の動きが早くなる。
否定も肯定もできない。
ただおかしいくらいに快感が押し寄せて、だけどたらなくて身体が焦れる。
疼きを発散させたくて必死に扱いた。

「俺があの夜どんなふうに千裕に触れたか、ちゃんと覚えてた?」

あの夜を―――忘れる、なんてできるはずがなかった。
明るい部屋の中で、あの夜を思い出す。
俺の知らない快感を引きずりだされたあの夜。
心臓が痛いくらい早くなって、やっぱり身体が疼いて、先走りを絡めぬるぬると手を上下させる。
そのたびに硬度は増し、背中に感じる智紀さんに疼きが増す。
なにをしてるのか、したいのか。
認めたくない。
けど、俺は―――、このひとに。

「……あ、ッ……ん、は……っ」
「もう、イク?」

冬だというのに汗が滲む。
笑みを含んだ声に頷くかわりに絶頂に達するためにがむしゃらに扱いた。
ひとりでスルことを覚えたガキみたいに、ひたすら摩擦を送って。

「早く、出せよ」

耳元で囁く声にきつく擦りあげて、言われるまま白濁を吐きだした。

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