17


「……違うんですか」

喋りながらも智紀さんの手は止まることなく、俺のをまた空気にさらす。
なぜか抵抗しようとしない自分に戸惑うけど、結局されるままで顔を背けながら返した。

「違うよ」
「……」
「京都で初日の出見ようかなーと思ったのテレビでゆく年くる年見てるときだし」

意外に渋い番組見てるんだな……。
ちらりと視線を向ければ目があって、ふっと笑われ勃ちあがったままだった俺のに触れてくる。

「……っ……でも」
「でも?」
「……」
「ちーくん、可愛いね」
「なんですかそれ」
「今日は素直だけど、拗ねたりもして、可愛い」
「……拗ねる?」

なんで、何に対して。
意味がわからずに視線だけで問い返すと、智紀さんは爽やかじゃない男くさい笑みをこぼした。

「んー。俺がちーくんを誘ったのが"ヤリたいだけ"なんじゃないかって思ってそう。で、それがちょっと不服そう」
「……は?」

なに言ってんですか、と思わず言った。

「なんでそれで俺が拗ねるんですか。それに実際そう―――」

話途中で智紀さんが吹きだす。
バカにされたような気がして顔が熱くなる。
なんですか、と言いかけ、

「千裕」

止められた。
俺の顔の横に手をつき、見下ろす智紀さん。

「確かに実際会ったらヤりたくなったけど、誘ったのは別の理由だよ。だから拗ねるなって」
「だから拗ねてなんか」

それで拗ねるとか、それじゃなんかまるで俺が……。

「それで千裕は?」
「は?」
「俺と会うことにしたのはヤりたかったから?」
「……ッ、バカじゃないですか。俺は初詣に誘われたから来ただけです」
「それだけ?」
「他になにがあるって」

もう二度と会うことなんてないと思ってたのに。

「俺にまた会いたかった、とか」
「……」
「ないの?」

燻ってた熱が、冷やされそうになってたのに、また再燃する。
なにも返せない俺の手が掴まれて下に持って行かれる。
智紀さんの手が重なったまま掴まされたのは俺の半身。

「あの夜から、会えなかった昨日まで俺のこと思い出したりしなかった?」

勃ちあがってる俺のを握らせられて、一緒に上下させられる。
ほんの少し俺より大きい智紀さんの手と俺の手が、俺のを擦って。
半身の熱さに息が詰まって、快感に手が震える。

「こんなに熱く硬くさせてるのはなんで?」
「……いま触ってるから……っ」
「そう? 俺と会えなかった間、寂しくなかった?」

問いかけばかり。
でもきっと答えなんてこの人は必要としてない。

「別に……」

智紀さんと一緒に手を動かしながら、返事する俺の声は小さい。

「あの夜のこと、思い出したりしなかった?」

いまは朝なのに、まるであの夜に戻ったかのように錯覚する。
部屋の明るさなんて気にならず、俺を見下ろすこの人に目を奪われる。
逸らすことなんてできないんだって思い知らされるように、その目に捉われる。

「俺のこと、思い出さなかったの?」

拗ねるように一瞬眉を寄せ、だけどすぐに楽しげに口角を上げる。

「思い出さなかった?」

水音が下から響いてくる。
溢れる先走りにスムーズに動く手。

「……少し……は」
「少しだけ?」
「……」
「俺のこと思い出して、あの夜思い出して」

俺が、この人に敵うはずなんてない。

「こうしてココ、こんな風にシた?」

何度も揺さぶられて、堕とされる。

「……してな……っ」
「本当に?」
「……」

笑う、その吐息が唇に吹きかかる。

「千裕」

身体がざわざわざわついて眉を寄せて、智紀さんを見つめた。
俺を追い詰める男は唇を触れ合わせ、咥内を犯してくる。

「……っ……ン……」

唾液を飲まされ、下唇を噛まれ。

「ちーくん」

俺のを握ってた手が離れる。
残ったのは俺の手だけ。
疼いて熱くて仕方ないのに、中途半端に止めることなんてできるはずない。

「俺のこと思い出してシたときみたいにシてみせてよ」
「……む……り……です」
「なんで? ほら、できてるよ」

動き続ける、俺自身を扱く手の甲を撫でられる。
ひとりでスる?
この人の前で?
そんなバカなことできるはずない。
なのに、

「いい子だね」

落される甘い声に、手が止まらない。

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