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「もう、我慢できない?」

暗い、なにも見えない状況で智紀さんがどんな表情をしてるのかは見えない。
けどなんとなく想像はつく。
まだ出会って数時間だけれど、あの綺麗な顔にからかうような笑みを浮かべてるのは間違いない。

智紀さんにいまの俺はどう映ってるんだろう。
流されてノンケなのに男とセックスしようとしてるバカなガキ、だろうか。
そもそもなんで目隠しや拘束なんて―――。

「っ!! やめっ、あっ」

思考がほんの少し逸れた瞬間、強い刺激が下肢を襲った。
勘違いじゃなければ、俺のものが口に含まれた感触。
熱い咥内で、舌が俺のを舐めてくる。

「やめ、智紀さんッ」

気持ちいい。
けど素直に受け入れるほどの経験値もない。
男である智紀さんにというだけじゃなく、そもそもフェラなんていままでの彼女にもしてもらったことはなかった。
強要する気もなかったし、逆に相手の口に突っ込むっていうのが微妙に嫌だってっていうか……。

「あれ? 気持ちよくない? いっぱい濡れてきてるけど」

俺のものの傍で喋っているから、智紀さんの唾液と俺の先走りで濡れた半身に息が吹きかかってぞくりとする。

「……っ、汚いしっ」
「さっきお風呂入ったから平気だよ」
「でも、そんなとこっ舐めるなんて……っあ」

もがいて逃げようとするけれど両手は使えないし腰をつかまれていて振りほどくことができない。
また咥内に含まれて吸い上げられた。
見えない、というのは怖い。
なにをされるかわからない、というのもだけれど、この状況では見えないから余計に快感が増幅されてしまうというか。
たいしたセックスしかしてこなかった俺にとって智紀さんの存在だけでプレッシャーなのに。

「んっあ、ほん……とっ、やめっ」

やめてくれ、と懇願しても続けられるフェラ。
初めてだけど、それが上手いってことは確かだ。
羞恥と困惑の中でざらりと舐め上げられるたびに吸い上げられるたびに腰が揺れ、射精感がこみあげてくる。

「ッ、ん、智紀さんっ……やめ……っ」

拒否の言葉なんて意味をなさないくらい頭の中が熱く真っ白になっていく。
背中をのけぞらせ抵抗らしい抵抗もできなくなってしまっていた。

「想像のなかではシてあげてた? ちゃんと、御奉仕もしてあげないといけないよ?」

だから、不意にそう言われたとき意味がわからなかった。
俺の返事は必要ないのか、すぐにフェラしだす。
快感に囚われながらも、智紀さんの言葉が引っかかった。
想像、ということは鈴を使っての自慰……で、ってことだろうか。
もちろんこれから先、鈴とそういう関係になることはありえない。

―――なんだろう。

よくわからないもやもやとしたものを感じた。
時折智紀さんは鈴のことを出してくる。
それはここでこうしている経緯がお互いの傷を舐めあう、という元があったからで仕方ないのかもしれない。
だけど―――、と頭の上でひとくくりにされた手をギュッと握りしめる。
ただ鈴のことを出されると、じゃあ智紀さんはどうなんだって思った。

俺に目隠しして拘束して、そして智紀さんは"誰"を見てる?


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