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頭上で両手を縛られ目隠しされて、俺はパニック状態だった。
バスローブの前が肌蹴られて素肌が空気にさらされる。

「あれ、下履いてきたんだ?」

笑いを含んだ声と、いいながら触れてくる指だけが俺が知りえる情報。

「……っ」

恥ずかしさに身体ごと横を向こうとしたけど途端に脚を掴まれた。
大きく広げられその間に智紀さんの身体が割って入ってくる。
見えない。
でも容易に自分がどんな格好になっているのかわかる。

「と、智紀さんっ」
「なに?」
「腕解いてください」
「なんで?」
「なんでって……。それに目隠しも」
「ダメ」
「なんでっ。俺、こんなの……っうわ」

無理です、と言いかけた。
けど、腹部に滑る指。
へその周りをなぞり上へと上がっていく指。
指の腹で胸の突起を押されて身体がびくついた。

「それで、ちーくんはいつも頭の中でどんなふうに従妹ちゃんを攻めてたの?」
「……っ、俺は……なにも……イッ」

ぐり、と突起を抓られまた身体が跳ねる。

「本当? いえばいいのに。ここには俺とちーくんしかいないんだし。俺がちーくんがシたかったことをシてあげるよ?」

例えば、こんな?
と、囁かれ身体がのしかかってくるのを感じ、唇が塞がれた。
もう何度目だろうキスするのは。
上あごをくすぐり、俺の口内を舐めまわす舌。
時折戯れるように俺の舌に絡んでは離れて歯列をなぞって、下唇を甘噛みされる。
やっぱり智紀さんのキスは気持ちいい。
角度を変えてからまた口内に差し込まれる舌に気づけば恐る恐る触れてしまい、それに気づかれた途端絡みついて、激しく交り合った。

「んっ……ふ……ぁ」

知らぬ間にキスに夢中になってると一旦は離れていた手が再び俺の胸をいじりだした。
女と違って膨らみなんてないまっ平らな胸。
弄って楽しいのか、弄られて気持ちいいのか。
否だろう、と思うのにじんじんと痺れが全身に広がっていく。

口内で唾液の混ざる音が脳髄に響く。
視界が塞がれてるから、衣擦れの音や微かにベッドの軋む音や互いの息使いが敏感に耳に肌に伝わってきてた。
くちゅ、と舌を吸い上げられて離れていく舌に無意識に追いかける俺に小さな笑い声が耳のあたりの空気を震わせる。
散々絡み合っていた舌は今度は俺の耳に這ってきて―――。

「こんな、感じ? 全身キスしてまわったり?」

想像シてた?、と囁かれる。
快感に囚われてた思考が歪む。
否定しようとするけど、すぐに首筋を吸われて麻痺していく。
俺―――なにしてるんだろう。
肌をくすぐる下と唇と指と吐息とに身体の奥底が疼いて―――相手が男だとか、おかしい、とか、違和感なんてものすべて溶けだしていくのを感じた。
視覚を奪われ、動きを封じられて、与えられる快感に過剰に身体が反応する。
もうどれだけ身体中にキスを落とされたのか。
中心には触れてもらえず、女のように胸を弄られ、肌に吸いつかれた。
吐息が吹きかかるだけでも震えてしまう自分の身体が信じられない。

「ちーくんは好きな子を想像しながらスるのって罪悪感とか沸いちゃいそうだよね」

からかわれているのか、時折そんなふうに鈴のことを出され投げかけられる。
そのたびに「していない」と首を振るけど返ってくるのは小さな笑い声だけだった。
肌を滑る指先に身体の奥底が疼いて痺れて息苦しくなってくる。
焦らされすぎて苦しい。
触れられてもいないのに俺の半身は猛りきっていて脈打っているのを感じる。

「……っ……智紀さん……っ」
「なーに?」

早く触れてほしい、なんてこと言えるはずない。
名前を呼んだはいいけどそれ以上なにも言えなくて唇を噛み締めてるとまた笑い声が響いた。



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