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ぐらぐらする。
湯あたりならいい。

「ちーくん、舌出して」

ほら、とギュッと半身を握られて、自分から出てるなんて信じられないくそ甘い声とともに舌を出す。
空中で絡みついてくる舌。
やばい、やばい。
絶対やばいって―――。
理性が警報をガンガンならしているのに俺はされるまま、智紀さんに身体を預けてしまっていた。
水面が揺れる。
空気の冷たさが肩を冷やしていく。
だけど身体は熱かった。

「ちーくんて感度いいね」

俺のを扱きながら背中を指先で触ってくる。
背骨を辿るように動いてるだけなのにむず痒いような、気持ちいいような感覚に
身体が震えてた。

「それに、ここからもたくさん出てるよね。お湯とは違うし」

尿道を指先で弄られる。
自分の身体は自分が一番わかってる。
認めたくないけど先走りが滲み出してるのは知っていた。
いまが人生で一番恥ずかしいんじゃないのか。
楽しそうにからかわれて、顔が異様に熱い。

「……っ…く」
「ちーくん、俺も気持ちよくなっていーい?」
「……は…い?」

いまいち意味がわからずにいると少し腰を浮かされた。
それまで俺が下敷きにしてた――智紀さんの硬いものが俺のと一緒に握りこまれ
る。
はじめての感覚。
そりゃ自分以外のを見たことはある。
だけど触れ合わせるなんてはじめてで、ありえない。

「……ぁ…っ」

硬く脈打つ互いの熱さが伝わってきてくらくらする。
ありえない、はずなのに腰が揺れていた。
風呂の熱さが、きっと身体の熱さを増長させてるんだ。
酒も入ってるし、だから……。
そんな言い訳ばかり自分にする。
でもそうしないと信じられない状況だからしょうがないよな。
俺のと智紀さんのを一緒に擦りあげる手が気持ちいいなんて、互いの性器が擦れあって脈動が伝わってくるのさえ気持ちいいなんて、何かのせいにしなけりゃ信じられない。

「きもちいーい、ちーくん」

耳朶を甘噛みされて、喋るたびにかかる吐息に身震いする。
耳も性感体なんだと、気づかされる。

「……っ……ン……っあ」

じわじわと湧いてくる吐射感。
最近は自分ですることさえなかったから久しぶりの刺激はきつすぎて、早々に達しそうになる。

「……ン、ん」

智紀さんの顔が近づいてきて自然に口を半開きにしていた。
塞がれて舌が差し込まれて。
ついさっき教え込まれた動きを思い出すように、自分から舌を絡めていた。
目を閉じる前に見えた夜空に浮かぶ月が満月だったから―――きっとそのせいもあるんだ。
俺が、こんなことをしてるのは。
だけど―――。

「……ッ!!」

ばしゃん、と大きく水面が揺れる。
唇が離れて、俺はとっさに智紀さんの腕を掴んでいた。
逃げるように。
だって―――。

「ああ、まだ早かった? ちょっと慣らしておこうかと思ったんだけど」

悪びれもなく笑って俺の唇を舐める智紀さん。
智紀さんの片手は自分でもそんな触ることのない―――後孔を撫でるようにそっと触れていて。
俺はその違和感と羞恥に正気に引き戻されていた。



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