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「……え」

不穏そうな言葉に思わず智紀さんを見てしまう。
見なきゃよかった、とすぐに後悔した。
笑顔を浮かべているけど、その目は艶っぽくて俺を誘うような色気を放っていた。


「気持ちいいこと、しよっか、ちーくん」

片手は腰を支えたまま、もう片方の手が俺の顎を捉える。


「あ、の」

キスくらい上手く出来なきゃ好きな子に嫌われるよ。
そう笑って智紀さんは俺の口を塞いだ。
―――嫌われるも何も、俺と鈴が結ばれることは一生ない。
そんな思いがよぎるけど、あっというまに消されていく。


「……っ……は」

やっぱりこれまでしてきたキスと全然違う。
絡みついてくる舌から鳥肌が立つような刺激が送られてくる。
抵抗するように智紀さんの腕に手をかけて離れようと力を加えた。


「……ッ」

だけど舌を軽く噛まれて、両手で拘束される。
抱き寄せられて肌と肌が密着した。
何度も角度を変えてキスされていくうちに力が抜けていくのを感じた。


「……ちーくんも舌、動かしな」

ほんの少し離れた唇が、俺にそう命じる。

無理だ―――。

理性が拒否するのに、また咥内に差し込まれた舌におずおずと舌を絡める自分がいる。
ジャグジーの気泡が吐き出される音にまぎれるように、俺の脳内に響く水音。
抵抗する力はいつのまにか弱まっていた。
相手は男なのに。
いや、相手が鈴以外の女とするキスは全部どうでもよかった。
性欲を吐きだすための、惰性でするキスばかりだった。
それと同じキスのはずだ。

なのに―――。


「……ぁ……ん……っ」

涎がこぼれるくらいに何度も続けられるキスに頭がもうろうとしてくる。
風呂に入ってるからだと思いたい。
だけどそうじゃないのは俺の身体が、下半身が反応してしまってることが現実を知らせる。


「……ッン!!」

密着した肌の間で俺のものが硬くなっているのを腹部で感じていたらそれに智紀さんが触れてきた。
思わず逃げかけた身体を抱きしめられる。
お湯の中で掌に包まれて上下に扱かれる。


「……っ……は」

まじでまずい。
握られて、擦られる、なんていうのも女にしてもらったこと……あったっけ。
挿れて、吐き出せば終わりのセックスしか知らなかった俺を煽るように動く指。
終わることがないようなキスに、俺の半身に与えられる刺激に思考が溶けていく。


「……エッロイ顔」

ようやく離れた唇と唇。
俺は荒い呼吸しか吐き出せないのに、智紀さんは余裕の表情。
俺に呟く声こそ俺にしてみればエロく、甘くて―――まじでやばい。



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