4 プレゼントは気合入れて選んだでしょー!


なんで、ふんどしなんだ?
渡されて受け取ったけど疑問が頭の中いっぱいだ。
智紀さんジョーク?

「それ特注だよー。手触りいいでしょ?」

……ジョークじゃないのか?

「ありがとう……ございます?」

予想外なプレゼント過ぎて笑顔が引き攣りかけた。
でもなんでふんどしなんだろう。
智紀さんのことだから裏があるのか。
ふんどしを手にしてまじまじと見つめる。けど、真意が読めない。

「……気に入らなかった?」

ふんどしを眺めたまま逡巡していると智紀さんの少しだけトーンの落ちた声が響いた。

「え」

顔を上げると笑顔だけど、どことなく困ったようなっていうか、残念そうというか寂しそうというか。

「あ、いえ、そうじゃなくって。別に気に入らなかったとかじゃなくって」
「そう?」
「ただ……」

言い淀む俺に智紀さんが首を傾げた。
俺はふんどしに触りながら迷いつつも続ける。

「なんでふんどしかなと……」

思いきって言えば、すぐにきょとんとした声が返ってきた。

「ちーくんが欲しそうだったから」
「誰が」
「千裕」
「……」
「……」

俺と智紀さんはじっと見つめ合った。
無言、だけど、え?って感じでお互いを探るように。

「……ちーくんずっとスマホでふんどし見てたから」
「……え、俺……あ」

見てないと言いかけて、思い出した。
がっつり見てた、見まくってた。
だけど、だ。

「えっと……確かに見てたんですけど、あれ仕事の関係で」
「仕事?」
「そう……。これなんですけど」

バックを取りに行って、その中から今日退社するときにもらった絵本を取り出して智紀さんに差し出した。
智紀さんが絵本をまじまじと見下ろしてわずかに目を見開く。

「"ふんどし妖精の大冒険 ふんどし王国の秘宝を追え"……」

ふんどし妖精だの王国だのなんだって感じだけど。

「……ふんどしの妖精が王国の秘宝を探すというタイトル通りの内容で、その表紙に書かれてるふんどし締めたイガグリ頭の男の子がふんどし妖精なんです。その絵本ようやく出来上がったんですけど……題材がふんどしだし、それで俺もいろいろとふんどしについて調べてたっていうか……」

絵本の表紙にはふんどしを履いたぷりぷりのケツをこちら側に向けて満面の笑顔を浮かべて羽をはばたかせている妖精だというアーニキちゃんの姿とふんどしロードという真っ白なふんどしの道に王宮や秘宝をイメージした財宝なんかが描かれていた。
なんでふんどしなんだ、って最初この絵本の編集に携わることになったときに思ったけど世の中にはいろんな絵本があるし、まぁふんどしでもなんでも感動を届けることができればいいのか―――と、楽しくも感動的な絵本を読んで納得した。
でもふんどしって知ってはいるけど身近と言えばそうでもない。
だからスマホで眺めたりしてたんだけど。
まさか智紀さんがこんな勘違いするなんて。

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