12月7日


"智紀さんが捺と優斗さんが呼び捨てで呼びあってるのを羨ましがってちーくんに自分も呼び捨てで読んでほしい!と半分冗談交じりで言いよると顔真っ赤にして少々噛みながら
呼ぶ、智紀さん勃つ→go"
"好き好き言いあってて下さ〜い!!できればちーくんは照れながら!! (("


***



日曜の夕方。今日は特に外出することもなくDVDを見たりしながら過ごした。
となりには千裕が雑誌を読んでいる。
「ちーくん」
まったりした時間。窓の外はもう暗くなってきている。
だらだらと傍らの千裕に手を伸ばして腰に手を回し、肩に顎を乗せた。
「なんですか」
ちらり、と一瞥する千裕はさすがに付き合いだして長いからか最初の頃のように至近距離でも顔を赤らめることはない。
言葉づかいは相変わらず敬語混じりだけどそれも可愛いからどーでもいい。
「智紀って呼んでみて」
「智紀さん」
「呼び捨てでってことだよ」
ぐっと腰を抱いた手に力を込めて笑いかける。千裕は一瞬ぎょっとしたようにして目を泳がせながらさりげなさを装ってまた雑誌に目を落とす。
「いまさらでしょ」
「えー。俺いまちーくんに呼び捨てで呼んで欲しい気分なんだよ」
「知りませんよ」
そっけないなぁ、とやっぱりな反応に笑ってしまう。
「この前さ、偶然優斗と捺くんに会ったって話しただろ?」
「ああ、言ってましたね」
「その時にさ、俺が声かける前にあいつら名前で呼び合ってたんだよ」
「そりゃ付き合い長いしいいんじゃないですか」
「えーだって普段"優斗さぁん!"に"捺くん"だろー」
「……その真似似てませんよ」
「えー俺の渾身のモノマネなのに」
「どこが……」
「でさー俺も千裕に"智紀"って呼んでもらいたくなったわけ」
「人は人、自分は自分、でしょう」
「いやいや。いいところは見習いたいからその言葉いらない」
千裕の視線は雑誌だけど、その瞳は動いていなくてどうやってこの状況を切り抜けようかって頭を悩ませているのが伝わってくる。
というより呼び捨てってそんな難しいかなぁ?
「ちーくんが照れちゃうっていうなら普段はいいからさ。いまだけ呼んでみてよ」
「別に照れませんよ、それくらい」
「じゃあ呼んでよ」
「いやでも智紀さん年上だし」
「恋人同士の間に歳の差なんて関係ないだろー? それに俺は千裕に呼んで欲しいの」
どうしても恥ずかしいって言うなら別だけど、と囁けばぴくりと千裕の眉が動く。
ガキじゃあるまいし恥ずかくなんてないですよ、とぶつぶつ聞こえてきた。
それに笑いだしそうになるのを我慢して期待に胸を膨らませながら耳を澄ませて待つ。
「―――智紀」
ぼそり、と呟かれた俺の名前。
診る見ると目前の千裕の耳が赤くなっていく。
それに噛みつきたくなるのを感じながら、
「好き」
「は?」
「呼び捨てプラスで好きも加えて」
って言えば、千裕は眉を寄せて俺を見た。
「だって俺のこと好きだろ、ちーくん? 俺は千裕のこと大好き。千裕は?」
「……トモキ、スキ」
「なんでカタコトだよ!」
思わず吹きだしてしまいながら千裕をソファに沈めて馬乗りになった。
「ほら、もう一回」
む、と口をつぐんだ千裕が顔を背けて数秒。
「智紀……」
「ん」
「…………好きデス」
顔を真っ赤にさせてる千裕に俺のにやけは止まらずに、
「俺も、好き好き」
と言いながら唇を重ね合わせたのだった。



☆おわる☆

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