12月14日


躊躇いなく唇が重なり合って、貪るような最初から深く激しいキス。
至近距離でよく知った男二人がキスしている。
唖然としてしまう。
ふたりでヤればいいと言ったのは俺なんだけど、実際されると固まってしまう。
だってAVは男だし見たことあるにしても。
目の前で他人の情事を見るなんてことあるだろうか。
軽いキスならともかく、
「……んっ」
掠れた吐息と、唾液の混ざりあう音がこちらにまで聞こえてくるほどの生々しいものだ。
角度を変えて少し離れたと思ったら舌を出したまますぐに宙で絡めあわせてまた唇同士が触れ合って。
どちらの咥内で交り合ってるのかはわからない。
ただ空気がどんどんと濃密なものになっていくのを感じる。
湯船が揺れてハッとする。
目の前のキスの激しさに目を奪われてたけど―――それだけじゃないってことを知った。
少しづつふたりの腕が動いている。
夜の露天風呂では水面の中でどう動いてるのかは見えないけど、それでもキスの合間に漏れる吐息の熱さに触れ合っているってことがわかった。
「……っ」
急激に羞恥心が湧き上がる。
呆然としてたけどこのまま見てていいのか、俺先に上がったほうがいいよな。
視線を逸らして腰を浮かしかけたら、
「ゆーと」
と智紀の声が響いた。
頬を上気させ濡れた智紀の瞳に俺が映る。
「ちゃんと見てなきゃダメだよ? せっかく俺がアキとヤるっつってんだから」
妖しく笑う智紀の首筋に、鎖骨にと舌を這わせる晄人。
その状態でちらりと俺へ視線を寄越し晄人もまた挑戦的に口角を上げた。
俺はなにも言えずしかたなくふたりに視線を止める。
晄人が智紀の耳元で何か囁いて、それに答えるように智紀もまた晄人の耳元で囁く。
なにを話しているのか。近くにいるのに小さすぎて聞こえなくて、不安を感じてるとまたふたりは激しいキスを再開させた。
12月中旬の夜風は冷たいのに段々それを感じなくなっていく。
「……っ、ぁ」
智紀の身体が揺れて晄人にしがみつくように抱きついて。
離れかけた唇を晄人が追いかけて塞いで、後頭部を逃げられないように押えこんで。
もう片方の手は湯に沈んでどうなっているかわからないけど、でも。
「……ン……っ、は」
甘い響きを混じらせはじめた智紀の吐息がなにが行われているかを指しているようで。
いつも俺にちょっかいかけてくるときとは違う表情を凝視してしまう。
次第に湯船の揺れが大きくなっていく。
「―――智紀、腰上げろ」
どれくらい見ていたのかわからない。
呆然としているうちに晄人がそう言って、
「痛くすんなよ」
と智紀が目を細め熱く赤くなった身体をわずかに空気にさらし、晄人にまたがった。
「……っ、は……んっ」
ゆっくりと腰を落としていく。
揺れる湯船。
思わず下を見てしまう。
本当に?
視線をふたりに戻して、息を詰める。
「ン……っ、深っ」
ふたりの身体が上下に揺れる。大きく湯船が揺れて荒い息が響きわたる。
のけぞった智紀に晄人が食いつくように顔をうずめて、智紀の手が抱きこむように晄人の首にまわる。
「は……っ、ぁ、アキ……っ、そこ……っあ、ぁ」
「……ほら、もっと腰動かせ」
甘すぎる、気持ちよさ気な声。
掠れた低く欲情をそそるように笑う声。
―――知らず身動ぎした。
ずくり、と身体の芯が疼いて、いまさら俺は気づいた。
「……ぁ、んっ……は……優斗」
揺さぶられながら智紀が口元を緩め俺を呼ぶ。
「ね、その気に、なった?」
動きを止め楽しげに訊かれ、慌てて視線を逸らした。
「……別に」
「へぇ、そう? だって、晄人」
「お前がもっとヨガればいーんだろ」
「じゃあもっと頑張れーアキ」
ならちょっと立てよ、はいはい、と智紀が檜風呂の縁に手をつきいて、そして晄人がその背後にまわり一気に貫いた。
湯船の中でなく、目の前で太いものが突き刺さっていく。
「っ、ぁ、ぁ」
激しい律動と嬌声に身体中が欲を訴える。
「ゆう、っ、は……ぁ」
きもちいーよ?、と横目に艶のある眼差しを流し笑う智紀に。
「……」
俺は白旗を上げることを余儀なくされた。


☆おわるよ☆

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