12月13日


"優斗受け、智紀晄人攻め3P。お風呂にて。のシチュが見たいです〜!
テクニシャンな智晄、抵抗しつつも快感に流されてく優斗…想像するだけで萌えますクリスマスだしほろ酔いだし…的な。"
"BLINDFOLD大人組で…パラレルとして3Pとか見てみたいです。
あと暖かい感じのお話とか。"


***



「あ〜料理も酒も美味しいねー」
熱燗を飲みながら智紀がしみじみと呟いた。
「そうだな。予想以上になかなかいい」
機嫌良く頷くのは晄人で、同じように熱燗を飲んで刺身を食べている。
「……」
俺は一人用の鉄鍋に手を伸ばしすき焼きを溶き卵の入った器に取りながら内心ため息をついた。
確かに料理は美味しい。
海の幸に山の幸、肉に天ぷらに。
テーブルに所狭しと載せられた料理の数々はどれも美味しかった。
「ほら優斗も飲んで飲んで」
「……ありがと」
でも、だ。
なんで俺ここに居るんだろ?
12月中旬の週末。休日出勤も多々ある中で今週は土日なにも予定がなくゆっくり過ごせると思っていたのに。
突然晄人と智紀が押しかけてきたと思ったら「温泉に行くぞ」と連れだされやってきたのは温泉地の高級旅館。
そしていまは浴衣に着替え豪華な夕食をとっているところだった。
露天風呂付の部屋は二間続きで広い。
忘年会忘年会、と智紀は言っていたけど、なぜ温泉。
食事の前に入ってきた大浴場や露天風呂のお湯は確かに日頃の疲れを癒してはくれたが。
もうじきクリスマスだっていうのにこのふたりは男三人で温泉なんて寂しくないのかな?
恋人のいない期間は俺たち三人着々と更新されていってる。
「どうした、優斗。浮かない顔してるぞ」
隣に座っていた晄人がわりと酒が入ってるのに顔いろを一切帰ることもなく俺の顔を覗き込んできた。
「いや別に。……ただ年の瀬に男三人で温泉旅行って……微妙だなって思っただけだよ」
「ひどい、優斗! 男三人だからこそ気兼ねなく寛げるんだろ!」
「そうだ。たまにはゆっくりしたいだろ? 智紀がいないほうがもっとゆっくりできたけどな」
「それはこっちのセリフ。晄人こそ来なくてよかったのに」
バチバチと何故か火花を散らせてるふたりを無視して、確かに気兼ねはないなと俺も熱燗に手を伸ばしたのだった。
―――ほんの少しイヤな予感にとらわれながら。


***


「露天風呂、入るか」
夕食を終え、そのまま酒盛りのようになっていたら晄人がそう言って立ち上がった。
「そうだな。あんまり酒飲んじゃったら寝ちゃいそうだしね」
智紀も頷いて立ち上がる。
そしてふたりは動かない俺を見た。
「ごゆっくり」
焼酎を飲みながら言えば、
「お前もだろ」
「優斗もでしょ」
とふたりが声を揃える。
「……ええ。なんで。俺はあとでいいよ」
「お前、智紀とふたりで入れっていうのか」
「そうだよー。俺も晄人とふたりとかいやだね。せっかく露天風呂付の部屋とったんだし、三人で来てるんだから一緒入ろうよ」
「いやでも」
「広いから三人でも大丈夫だ。来いよ、優斗」
「ほら立って立って」
智紀に腕をひっぱられて渋々立ち上がる。
旅館に着いてから一度三人で大浴場には行ったし、確かに部屋の露天風呂も入りたい、けど。
三人で入る必要ある? いくら広いといったって男三人入れば手狭だろうに。
「俺が脱がしてやろうか?」
「いや俺が脱がしてあげる」
「……自分で脱ぐからいいよ」
うるさいふたりに仕方なく三人分のタオルを持つと露天風呂へ向かった。
室内風呂から外へ出るドアを開ければ冷たい空気に身体が震える。
露天の檜風呂は隣接してるからすぐに入って、今度はその熱さに少し身体が強張って、ゆっくりとお湯に沈めば力が抜けていく。
「あーいいお湯だね」
「本当……気持ちいいな」
ほう、と息をついて俺も頷いた。
やっぱり温泉っていいな。
綺麗な夜空に檜のいい香りに温泉のなめらかな泉質に癒される。
目を閉じて頬に感じる夜風さえも心地よく感じて―――たけど、ふと違和感を覚えた。
なんだろう、この違和感。
と思って目をゆっくり開け右を見る。
にこっと笑う智紀。
そして左を見る。
緩く口角を上げる晄人。
「……」
俺はまた夜空を見上げた。
……なんで俺挟んで横並びに風呂入ってるんだ?
確かに横幅が広いわけだけど、でも……密着しすぎじゃないのか。
ちょっと動けば肩がぶつかるくらいの距離だ。
なんなんだ一体―――……っ!?
勢いよく左を見た。
晄人は夜空を見上げてい―――るんだけど、その手が俺の太腿に触れてきてる。
「晄人……」
「ん? どうした?」
どうしたって、そんな色っぽい流し目されても俺の方が困る。
傍に智紀がいるから触るななんてはっきりは言えない。
いや言いたいんだけど言ったら智紀も調子に乗って触ってきそうだから、目だけで必死に晄人に訴えながら湯船の中で晄人の手をつねった。
「酒持ってくればよかったな」
だけどひるむことなく晄人はさわりつづけてくる。
「……晄人……ッ!?」
もう一度その名を呼んで―――右を見た。
「気持ちいーね、優斗」
笑顔だけはさわやかな智紀。だけどその手は湯船の中で俺の腰を撫でてきてる。
もちろん即座に智紀の手をつねるけどこっちもひるむどころか平然と手を動かしてくる。
「……っ」
このふたりしめし合わせてたりするのか?
たまたま?
どっちかわからないけど、こんなんじゃ落ちついて風呂も入ってられない。
「俺、上る」
「ダメ!」
「ダメだ」
立ち上がろうとしたら両側から引きとめられる。
「まだ入ったばかりだろ」
「そうだよ。もうちょっと入ってようよ」
じゃあお前ら触ってくるな、と言いたい。
「智紀お前先にあがれ。どうせお前のせいで優斗がゆっくりできないんだろ」
「はぁ? 晄人のせいだろ? このセクハラ親父」
「あ? 誰がセクハラだって」
「晄人が優斗の太腿触ってるの丸見えなんだよ。優斗が嫌がってるのわからないのか?」
いや、お前もまだ腰触ってきてるだろ。
「よく言う。お前だって触ってるだろ。このむっつり痴漢が」
「痴漢じゃありません。同意です」
「……いつ同意したんだよ」
ふたりのやり取りはもとより同意なんてもちろんしてないし、もういいから上がりたい。
「晄人のせいで優斗が拗ねただろ」
「ああ? お前のせいだろ」
そう言いながらもふたりは俺を触ってきてる。
「……そんなにヤリたいならすればいいだろ」
せっかくの温泉なのに、というのと、思っていたよりも俺は酔っていたらしい。
ふたりの言い合いにイライラして気づけばそう言っていた。
「え? いいの?」
「じゃあ智紀上がってろ」
「はぁ? なんで俺が」
「晄人と智紀がヤレばいい」
「そうだよ。晄人と俺が……え?」
ふたりが一斉に俺を見て、
「「いやだ」」
と即答した。
「……イヤだって、俺だってヤダよ。せっかく温泉浸かってのんびりしてるのに……。そんなにヤリたいならまずふたりがヤってくれ。ふたりの見てヤル気になったら俺も混ざるから」
もうやけくそだった。
冷静になれば自分がどんなあり得ないことを言っているのかわかるのに、いまの俺はぶっ飛んでしまっていた。
それにどうせこのふたりは絶対ヤらないだろ。
これまでなんだかんだと翻弄されてきたけどいっつも俺ばっかりで、このふたりが絡んでるのなんて見たことがない。
「―――ふうん。俺と晄人がヤってんの見て興奮すれば混ざるんだ?」
「そう……えっ?!」
驚いて智紀を見ると立ち上がって俺の前を横切ると晄人のそばに屈みこんだ。
「お前とヤんのかよ」
「優斗がその気になればいいだけだろ?」
「あーそうだな」
智紀が晄人の首に手をまわして俺を見た。
「ゆーとくん、ちゃんと、見てろよ?」
爽やかさのかけらもなくなった妖艶の笑みを浮かべた智紀がそう言って晄人に顔を寄せる。
晄人も一瞬俺を見るとニヤリと笑って―――ふたりの距離がゼロになった。

☆つづくか!☆

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