one night
「ちーくん、もう一杯〜」
「飲みすぎじゃないですか」
元旦の昼下がり。智紀さんが実家からいただいてきた片瀬家お手製のお節とお雑煮をいただいて、いまは金箔入りの日本酒を飲んでのんびりテレビを見ていた。
「だってさー年末の怒涛の忙しさからようやく解放されたんだよ。久しぶりにちーくんとこうしてゆっくりイチャイチャイチャイチャできるんだよ」
「昨日の大晦日もゆっくりしたでしょ」
「昨日は昨日! 今日は今日! それに昨日はちーくんに大掃除でこき使われたし」
「はいはい。御苦労さまでした。―――あんまり飲み過ぎないでくださいよ」
仕方なくお酒をついであげるとぐいっと一気に飲んでしまう。
「智紀さん……」
たまにはいいかと思うのとあんまりペース速いと身体によくないだろっていうの半分。
「ちーくん」
酒気を含んだ吐息が顔にかかり、すぐに唇が塞がれた。俺を抱きしめる腕、あっという間に俺の咥内を這う舌。熱く絡みついてくる舌は酔いのせいかいつもより性急で激しい。きつく吸い上げてくる智紀さんに俺は抵抗する間もなく溺れさせられる。
「……千裕」
はぁ……と少し乱れた呼吸を出してしまっているとコツンと額を合わせて智紀さんが俺の顔を覗き込んで微笑んだ。妖艶な笑みに密かに身体が疼く。
きっと俺は拒否できない―――し、そうする必要もない。
「ね、シたい」
いいですよ、と素直には言えないから代りに智紀さんの背に手を回し―――。
「わかめ酒したい」
「……は? 何言ってるんですか。するわけないでしょうが!」
わかめ酒って言えば正座して股の間に酒をついで飲むとかいうやつだろ。
「えー! したい! ちーくん杯で金箔酒飲みたいー!」
「嫌です。絶対いやです。断固拒否です。俺は智紀さんと違ってノーマルなんです!」
甘い空気は霧散して。流されないんだからな、と俺は口を引き結んだのだった。
☆おわり☆
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