春は来るのか〜すべての始まり2014


『あなたにはうんざりよ。毎日毎日料理にうるさいし、お金にもうるさい。別れてください』

俺の実家のオムライスの卵はふわふわだった。オムレツを真ん中で切れば綺麗に左右に割れてふわふわとろとろの状態になる。当然妻にもそうするよう伝えていたある日、突然別れを切りだされた。妻の言い分など理解できず、ろくに料理もできない女など願い下げだと離婚して早二月。
ひとり新年を迎えた俺は気晴らしに車を走らせ他県まで初詣に来ていた。
見知らぬ景色。俺のことなんて誰ひとり知ることなんてない見知らぬ土地にほっとする。
価値観の違う妻と別れたことに後悔はないが、それでも時折思い出しては苛立ちが沸いていた。

「――あれ、松井さんじゃないですか?」

それは自分の名前だったがよくある名前だ。聞き覚えのない声に振り返ると20代後半くらいの男がふたり立っていた。数秒して以前取引したことのある会社の社員だと気づく。

「どうも、ご無沙汰しております」

確か声をかけてきた男は山崎という名だったが、もうひとりはわからない。それでもひとまず年下であろうが仕事関係だ。営業スマイルを浮かべ挨拶をすれば、にこやかにふたりは傍に来た。

「どうも。お久しぶりですね。こんなところまで初詣ですか? 奥様と?」
「ちょっと足を伸ばしてみましてね。ひとりでですが」

苦笑して見せると山崎はそうですかと目を細めぽんと手を打った。

「そうだ、これも何かの縁だ。よかったら俺たちと一緒に初詣しませんか」
「―――え? あ、いえ。ご迷惑ですし」
「そんなことありませんよ」

いや、こっちが願い下げだ。なぜ仕事関係のしかも大した面識もない人間と過ごさなければならないのだ。それに相手も社交辞令だ。断ればすぐに話は終わるだろうと思っていたのに、

「俺、松井さんとゆっくり話してみたいと思っていたんですよ。ね、ぜひ」

山崎は折れることなく、俺は半ば強引に彼らと過ごすことになってしまったのだった。
まさかこの出会いが―――悪夢の時間の始まりとも知らず。


*つづく*


次回予告!ハメられた松井!処女喪失!いきなりの3Pで……!?

「……っああ、もっ……こわれるっ……!!」


『リーマン松井、初めての×××』は2015年1月の更新予定です!


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