12月25日@


「できれば風邪をひいたちーくんを優しく看病するともきさんとかだったらすごくすごーく萌えます!!」
「熱だしてダウンしたちーくんを智紀が真面目に看病。弱気になったちーくんが添い寝してくださいとか言っちゃうの読みたいです。」


***



「大丈夫、ちーくん」
「……は……い」
今日はクリスマスだ。なのに俺はベッドの上でようやくの思いで声を出した。
まさかまさかこんな年の瀬に風邪ひくなんて思ってもみなかった。
「薬飲まなきゃいけないから少しでもご飯食べて。たまご粥だよ」
ベッドに腰掛けた智紀さんがお粥をふうふうと冷ましながら俺に食べさせてくれる。
普段なら自分でも食べれますなんて言ってるはずだ。
でもいまは無理だ。
いったいいつぶりだろうか。39度近くの熱なんて。
幸いインフルエンザではなかったけどだるくてしかたない。
「あーん」
「……」
ぱくり、と口に含む。
熱くない、ほどよい温度。
だけど熱のせいかあんまり味が感じられなくて、それが残念だ。
せっかく智紀さんが作ってくれたのに。
というか―――せっかくのクリスマスなのに。
別にイベントが大好きってわけじゃないけど本当なら今日は外食する予定だった。
俺だってプレゼント用意してたけど渡せる状態じゃない。
ああ、なんで俺風邪ひいてるんだろ。
「無理して全部食べる必要ないから、食べれるだけでいいよ」
年末で忙しいはずなのに、俺のために定時退社して帰ってきてくれて看病してくれる智紀さんに申し訳なさでいっぱいだ。
「……熱、なかなか下がらないなぁ」
智紀さんの手が額に触れる。
自分の身体が熱いからか智紀さんの手がひんやりとして気持ちいい。
思わず目を閉じてため息をついた。
「薬飲みな? で、寝て」
「……」
離れていった手が寂しくて目で追う。
目があった智紀さんは、ん?、と首を傾げて微笑んで薬を飲ませてくれた。
「……智紀さ……ん」
「うん」
「……メリークリスマス」
脈絡なくいきなりそんなことを言った俺に智紀さんはきょとんとしたあと目を細めて、
「メリークリスマス! ちーくん」
と俺の頬にキスをした。
「……あの……すみません……いろいろ」
「なにが? 俺は千裕と一緒にいれるだけで嬉しいからいいよ」
「……」
「いまはゆっくり休んで風邪治すのが先決。治ったらちょっと遅れたクリスマスパーティしなおせばいいしね。そのときはたくさんサービスしてもらおうかな」
悪戯気に笑いながらも、ぽん、と俺の頭を撫でて横になるよう促してくる。
「片付けてくるね」
そしてそう皿を持っていこうとした智紀さんの服のとっさに掴んでた。
でも力が入らなくてすり抜けてしまったけど、智紀さんは気付いて俺を見下ろす。
「……あの」
風邪ひいたときって、ちょっと気持ちまで弱まるっつーか……。
智紀さんは忙しい人だから風邪移したら大変だってわかってるんだけど、俺は―――。
「あの……少し……となりに……」
もごもごと小声で情けなく言う。
「添い寝……してくれませんか」
「―――」
気まずくて目を伏せた。
きっと智紀さんは、
「もちろん。いいよ」
ダメなんて言うはずない。
そう知っていても、あっさりと俺の横にもぐりこんで抱き寄せてくれる手にふっと頬が緩む。
あやすように背を撫でる手に、次第にまどろんで俺は智紀さの胸元に頭を預け眠りに落ちたのだった。


*おわり*

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