12月24日


「サプライズで啓を学校帰りにどっか旅行に拉致っちゃう和己」

***



「行くぞ」
「どこに」
「ホテル」
「なんで」
「クリスマスだろ」
「……」
確かに今日はクリスマスイブだ。
でも俺と和己はほぼ同棲状態だし、わざわざホテルにいく理由もない。
「和己明日も学校だろ」
「有給取った」
「なんで」
「クリスマスだろ」
わざわざ有給!?
俺はもう今日で冬休みに入ったけど和己はまだ仕事がある。
なのにクリスマスだからって有給?!
ありえなさすぎてぽかんとしている俺とは反対に和己は鼻歌交じりに車を走らせる。
そういえばここ数日やけに機嫌がよかった気がする。
「―――着いたぞ」
いったい何があったんだ。ぼんやりと考えていたら車が止まって俺は固まる。
「ここどこ」
「だからホテルだっつっただろ。おりろ」
「え、で、でも」
てっきりラブホでも行くのかと思えば有名なホテル。
唖然としながら俺は慌てて和己の後を追った。
そしてさらに唖然としたのは部屋に入ってからだ。
やたら広い部屋。
「なにここ」
「ジュニアスイートだったか?」
「ど―――……どうしたんだ、和己?!」
「お前なに騒いでんだ?」
「だって騒ぐだろ! クリスマスにスイートで……しかもなにこれルームサービス? すっげ……料理に……ケーキ……ワインまで。どうしたんだ」
これじゃまるで本当に恋人と過ごすクリスマスって感じだ。
でも和己がこんなことをするなんてどうしても信じられない。
「あ? クリスマスパーティだろ。なんだ、不満なのかよ」
「不満とかじゃなくって。だっていままでこういうのないし。っていうか和己イベントとか興味ないだろ」
「まーな」
「じゃあなんで」
「なんで? そんなン決まってるだろ」
ニヤ、と口角を上げて和己が俺をソファに突き飛ばす。
そしてテーブルに乗っていたケーキのクリームを指ですくうと俺の口に突っ込んできてそれから唇を塞いできた。
甘い生クリームと和己の熱が咥内に広がる。
いまの状況に戸惑いながらもあっという間にキスに夢中になってしまう。
和己の指が乱暴にでも優しく俺の髪に触れてくる。
「……っ……は」
濃い、深いキスに身体が熱を持っていくのを感じながら荒々しいキスに呼吸が乱れた。
もちろん和己は平然としていて、不敵な笑みで俺を見つめる。
「たまにはこういうクリスマスもいいだろ。俺だって一応お前より年上だし? たまにはいい思いさせてやりてぇんだよ」
「……和己」
ほらプレゼント。
と、いつ用意していたのか紙袋を渡されて中を見ればコート。
俺が雑誌で見てていいなって思っていたやつだった。
「……これ結構高かったんじゃ」
「気にするなって」
「……でも」
「その分身体で返せ」
「……」
ポカンとした。でも和己らしい言葉につい吹き出す。
正直身体でと言われたら、和己は体力相当あるしかなり激しいから全部付き合うにはきついけど。
「……いいよ。クリスマスだしな」
でも和己が俺のために用意してくれたこのプレゼント。
せっかくだから楽しもうと俺は笑い返した。
「じゃ、生クリームプレイな」
「えっ」
「あと窓で立ちバックな」
「……」
「それと泡風呂で―――」
「……」
「あー万馬券様様だな」
「……は!?」
万馬券!?と俺が声を上げると、ニヤリ、と和己はソファにふんぞり返って座った。
「あぶく銭はパーっと使うのが一番だろ?」
「……貯金って手もあるだろ」
「いーんだよ。ほら、早く身体寄こせ」
「……エロ親父か」
「エロくて何が悪い」
悪びれなく俺に触れてくる和己に―――もちろん俺が拒否するはずもなく。
散々ヤって、でもいつもと違うクリスマスを満喫したのだった。


*おわり*

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