12月23日


「ふたりでケーキを食べて穏やかなクリスマスを過ごす。途中で濃厚なちゅーしてほしい!はるかたんが幸せいっぱいな感じ希望です(笑)」
「クリスマスにワインを少しだけ飲ませてもらった遥ちゃんがものすごく色っぽくなっちゃうとかっ。」
「せんせーの家で初めて手料理を披露する遥ちゃんを幸せそうに眺めるせんせー。」


***



「美味しいかわからないですけど……」
テーブルの上に料理を並べながら、僕は目を泳がせて呟いた。
今日は三連休最後の日。明日はクリスマスイブで、でも明日は家族と過ごすことになっていたから今日一緒に先生と過ごしていた。
ツリーのない先生の家。大きすぎないクリスマスツリーと、ケーキを買ってきて、そしていつも先生にご飯を御馳走になってるからたまにはと僕がご飯を作ることになった。
でも料理なんてほとんど作ったことないから、うまくできたかわからない。
お母さんに作り方を訊けばどうしてとか質問されそうだったからネットや料理本を見て勉強した。
作ったのは今日が初めての料理だけど。
メニューはサラダとちょっと焦げてしまったフライドチキンと、あとはシチュー。
野菜の大きさとか不格好だけど……味見したら普通だったから多分大丈夫。
先生がじっと僕の並べた料理を見ていて緊張する。
「上手にできてるんじゃないのか」
「……フライドチキンが焦げました」
「それくらい平気だろ。―――いただきます」
「……いただきます」
平然と先生が僕の料理に手を伸ばす。シチューを食べ始める先生を思わずじっと見つめた。
ぱくぱくと食べていく先生。シチューだけでなく、フライドチキンやサラダも食べていく様子もじっと見つめ続けていたら、
「……遥」
と苦笑された。
「お前も食え」
「は、はい」
「心配しなくても、美味しい」
「……」
そう言ってくれた声は優しくて緊張がほどけると同時に照れで顔が熱くなる。
それを誤魔化すようにシチューを食べて、「……美味しい」って味見したときよりも美味しく感じたから呟いたら小さく吹き出された。
一層恥ずかしくて俯きながら飲み物を取って一気に飲む。
「おい! 飲むな!」
慌てたように先生が言ったけどすでに僕は喉を通る液体の熱さに戸惑いながら飲みほしていた。
「え……」
「いまの俺のワインだぞ」
「……」
先生はワイン。僕は未成年だからジュース。俯いてたせいで間違って先生のを取ってしまったらしい。
「大丈夫か?」
「……はい」
多分、と頷きながらじわじわと顔が熱くなっていく。
いやでもいままでもずっと顔は赤かったはずだし、ワインのせいじゃない……。
と思っていたかど食事を進めていくとじわじわ身体が熱くなってきて思わずため息をつくと熱がこもっていた。
「お前、酒弱そうだもんな」
「ご、ごめんなさいっ……」
謝りながらも身体が熱くて何度も吐息をついてしまう。
一杯飲んだだけでこんなになってしまうんだってぼーっとした頭で考えながら必死に手を動かしてシチューを食べようとしたけどあやまってスプーンを落としてしまった。
「大丈夫か?」
先生の手が僕の頬に触れてくる。
少し冷たい手が火照った頬に心地よくてすり寄ってしまう。
だいじょうぶです、と言いながらも吐息は漏れて目は潤んじゃって霞むし……。
それでもなんとか先生を見つめて笑いかけた。
「……お前」
「……はい?」
「酒、飲むなよ」
「……はい、未成年なので……もう成人するまでは」
「そうじゃなくて、俺以外のやつの前で飲むな」
「……はぁ……」
先生の言っている意味がよくわからなくて首を傾げて先生の目を覗き込むようにして見る。
そうしたら先生が深いため息をついて、
「飯はあとで温め直して食うか」
と言って、僕はさらに首を傾げたら先生が僕の身体を引き寄せて唇を塞いだ。
「ん……っ」
先生の舌が唇を舐めて僕の口の中に入ってくる。
それだけでまた身体が熱くなって震えて先生にしがみついてしまった。
そんな僕をきつく抱き寄せて先生は僕の舌に舌を絡めてくる。
大人な先生と違って、何度キスしてもまだ慣れないけど、応えたくて、もっともっと触れ合いたくて僕も必死で舌を動かした。
くちゅ、と唾液の交わる音が響いて唇が離れていく。
ちょっとまだ足りなくて先生の腕をぎゅっと握りしめる。
「……先生、もう一回……あの……きす」
「……お前ほんと……」
ため息をついて先生がさっきよりも激しくキスしてきた。
僕は嬉しくてお酒よりもなにより先生に酔って溺れていった。


*おわり*

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