12月2日


「デレるクロを希望します(笑)」
「朱理・くろカプであま〜いお話!この二人の甘さってどんな感じだろう?とすっごく気になってます( 〃▽〃)」

***



ドアを開けるとげほげほとせき込む声が飛び込んできた。
朱理は買ってきた食材や飲み物を冷蔵庫にいれるとポカリを一本手にして寝室に入った。
「クロ、調子は?」
まだ夕方だけれどカーテンを閉め切って暗い室内の中、ベッドで丸まっているのはいまもせき込んでいるクロだ。
昨日から体調を崩して熱を出し、今日は一日休んでいたのだ。
朱理はベッドに腰掛けクロの額にペットボトルの底を押しあてた。
げほ、と苦しそうな咳をしてクロがぼんやり目を開ける。
「……死ぬ」
「37度台の熱じゃ死なない」
帰宅間際送られてきたメールには『いま37.5……しぬ』とあった。
めったに風邪をひかないから熱が出ると大袈裟になってしまうのか。
「……しゅり」
「ポカリ飲むか?」
「……俺が死んだら後追いなんて……するなよ……」
「……この熱じゃ死ねないから、心配ない。それに昨日より下がっただろ? だいたいそんなにきついなら病院に行けばいいんだよ」
「……注射うたれたら……どーすんだ……よ」
「……」
子供か、と胸の内でぼやきつつため息つきながらも弱っている姿は珍しいから朱理は微かに口元に笑みを浮かべクロの頭を撫でた。
「腹減ってないか?」
問いに小さく首を振るクロ。
かわりに力なくシーツをぽんぽんと叩く。
「なに?」
「……ここ、来いよ」
「添い寝してほしいっていうことか?」
以前風邪をひいたのはまだ高校時代だった。
あの時は放課後見舞いに行って、そして『手、つなげ……』と言ってきたっけ。
―――風邪になると妙に気弱というか甘えるクロの性格を思い出し、朱理は上着をぬぐとクロの横に潜り込んだ。
「……あ」
「なに」
クロが眉を寄せてじっと朱理を見つめる。
「……あんまり近づいたら……風邪うつるんじゃねえ……の」
「平気だ。お前より身体鍛えてるし、もう10年は風邪をひいた記憶がない」
「……ばけものか」
ぼそぼそと呟きながら、クロの手が朱理の腰にまわって引き寄せた。
「……朱理」
「なんだ」
「さむい」
だから抱き締めろ、と密着してくるクロに朱理は密かに笑みをこぼしながらその身体を抱きしめる。
(捺が見たら"クロ、気持ち悪ぃ"とか言いそうだな)
そんなことを考え、だけどごくごくたまにだけれどこういう弱った姿も自分にとっては可愛いものなのだ、と幼い子にするように背中をさすってやったのだった。


*おわり*

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