12月4日


「お兄ちゃんとのラブラブデートからの甘々な展開をお願いします」
「車の中でのイチャコラを志望します!」

***


「欲しいものがあるなら言え」
無表情で兄はそう言う。
クリスマスイルミネーションで溢れた街の一角。佑希はそっと兄を見上げ困惑する。
「え……でも」
実の兄で、だけれど――恋人となった兄と迎える初めてのクリスマス。
当日は仕事で遅くなるからと、早めにプレゼントを買いにつれてこられたのだ。
「僕はなんでも……。兄さんがくれるなら……」
兄が選んでくれるだけで十分だ、と照れくさそうに佑希は頬を染めた。
一瞬、兄の目が揺れ「ついてこい」と言うと歩き出しそのあとを追う。
そしてついたのはジュエリーショップだった。
クリスマス前ということもあってカップルが多い店内に佑希はまた困惑した。
「……兄さん」
「指輪――普段はネックレスにするとかすればいつでもつけれるだろ」
「……指輪……で、でも」
男同士で、その上に血の繋がった兄弟でもあるのに。
自分はよくても―――兄はいいのだろうか。
嬉しさと不安をにじませた表情で兄を伺うと、
「なんでもいいと言っただろ。……俺がお前に渡したいと思ったんだ。受け取れ」
「―――……うん!」
パッと顔を輝かせ佑希は頷いた。
そしてふたりは指輪を選び、食事へと赴こうとしたところで兄のスマホが鳴りだした。
軽く舌打ちし、電話に出た兄はどんどん眉間にしわをよせていく。
「……悪い。トラブルがあったらしい。会社に戻らなければならなくなった」
「いいよ! 僕のことは気にしないで! ―――クリスマス、会えるの楽しみにしてるね」
その日は兄のマンションへ泊まりに行く約束をしている。たとえ帰りが遅くても、会えればそれで幸せなのだ。
「ああ」
ふ、とめったに表情を緩めない兄の口元に微笑が浮かび、佑希も頬を緩めた。

***

兄と別れた佑希はスマホを取りだした。そして電話をかけだす。
「―――もしもし。いまどこ? 俺は――……うん。結構近い。じゃあ待ってる」
通話を終えるとポケットにしまいながら軽い足取りで待ち合わせた場所へと向かう。
15分ほど歩いたところでクラクションが鳴った。
振り返れば通りの反対側に見知った車が停まっていた。
佑希はすぐに車に向かい後部席へと乗り込む。
「あー寒かった」
「―――本当だ。冷たい」
伸びてきた手が佑希の頬に触れる。と、同時に車が緩やかに動き出す。
佑希は手に頬を擦りつけるようにしながら男―――御堂に身体を寄せる。
「それでなにを買ってもらったんだい?」
「指輪。シンプルだけどわりと高め。エンゲージリングみたいな?」
「へぇ。佑希は指が綺麗だからどんなデザインでも似合いそうだね」
「じゃあ今度買ってよ」
「いいよ」
指に唇を落とす御堂に佑希は口元を緩ませ顔を近づけてキスをした。
舌をねじ込みながら首に手を回す。
舌を絡みつかせて好き勝手に御堂の咥内を荒らし、しばらくして満足したように唇を離した。
佑希の濡れた唇をそっと御堂の指が拭い、そのまま首筋へと降りていく。
「佑希には指輪もいいけど、首輪もいいかもしれないね」
「首輪? かっこいいのがいいな。綾人さんがつけてくれるなら欲しいな。指輪も、どっちも」
ねだるように見つめれば御堂は目を細め、「今度用意しておくよ」と言い佑希の唇を塞いだ。
ぐ、と首に触れていた指に力がこもる。
痕が残らない程度に加減された強さでじわじわと圧迫する。
「……ンっ」
佑希の咥内に入り込んでくる舌がゆっくりと動き、たえきれないというように佑希が舌を絡め次第に深くなっていく。
やがて車は停まる。だが降りることなくそのまま佑希は御堂に身体をゆだねたのだった。


おわり

prev next

TOP][しおりを挟む]