12月6日


「ラブラブな時の話をパラレルでもいいので読みたいです!」
「ラブラブっぷりが読みたいです?」
「幸せな先生と遥がみたいです!」

***



「面白いのか、これ?」
金曜の夜。先生の家でテレビを見ていたら先生が隣に座って聞いていた。
いまあってるのはアニメで有名な大泥棒と、そして別のアニメの探偵がコラボしたスペシャルストーリー。
「はい。面白いですよ。先生って漫画とかアニメって見ないんですか?」
「ああ。学生のころはまわってきた漫画見たりしたけど、いまは全然だな」
「そうなんですね。僕もすごくたくさん見るわけじゃないけど、たまに読むと楽しいです」
それにこのアニメの大好きで、と喋りながら先生とテレビを見る。
別に特別なことじゃないけど、先生と一緒の時間を過ごしてるっていうだけで幸せですごく嬉しい。
もう何回か見たこのアニメも新鮮に見えるくらいに楽しかった。
しばらく喋っていたけどいつの間にか夢中になってテレビを見ていた。
先生も静かだったから僕と同じように見ているんだろうって思ってたら―――ふいに肩に重みがかかった。
びくっとして視線を向ければ先生がもたれかかってきてる。
一気に顔が熱くなってどうしようって目が泳いでしまう。
テレビに向き直ろうとした途端、目があった。
僕の肩に頭を乗せていた先生が顔を上げる。
「面白いけど、飽きた」
先生がそう言って僕の腰に手をまわしてきた。力が込められて、えっと思ったときには逆転してた。
先生がもたれてきてたのに、いまは僕が先生にもたれかかるような態勢になってる。
「――遥」
頭上から落ちてくる低い声。
僕の頭の中からテレビのことなんてすっぽり抜けて、先生の声、体温に支配される。
そっと見上げたら影が落ちて唇に柔らかな感触。
唇をなぞる舌が僕の口の中に入り込んできて、僕の舌を絡め取る。
「……んっ」
もう数えきれないくらいキスしてきたし、慣れてもいいのかもしれないのに、何度しても慣れない。
いつもいつもずっと先生に翻弄されてしまう。
熱く蠢く舌に頭の中が溶けていきそうなくらい思考もできなくて、どきどきして苦しい。
でも苦しいけど―――。
「……いいのか?」
長かったのか短かったのかわからないキスが終わって、僕の顔を覗き込んで少し意地悪に先生が笑う。
意味がわからなくて首を傾げると、
「テレビ見なくていいのか」
って訊かれた。
「……っ、あの……」
密着した身体から伝わる体温とふきかかる吐息に僕のどきどきがもっともっと強くなってしまう。
もっと―――先生に触れて欲しいと思っているなんて先生が知ったらどう思うんだろう。
「……このアニメ……もう何回か見てるから……」
だから大丈夫です。
と、言った僕の声はどんどん小さくなって、そしてまた触れてきた唇にかき消された。
熱がどんどん身体じゅうに広がって疼いて、先生にしがみつく。
ぎゅっと先生が僕を抱きしめて。
僕の耳にはもうテレビの音なんて聞こえなくなって、ただひたすら甘い熱に溺れていった。


*おわり*

prev next

TOP][しおりを挟む]