12月16日


「優斗が会社の同僚や女子社員とかとしゃべってる姿が読みたいです。」


***



「せんぱーい! メシ行きましょー!」
ミーティングが終わってちょうど昼飯時。
ミーティング中からめっちゃ腹減ってたから、日頃気をつけてることも忘れて俺は尊敬する先輩、佐枝優斗さんに声をかけた。
でも弁当持ってきてることも多いからなーて思い出してたら、
「いいよ。どこ行く?」
と、先輩が頷く。
やったー!
ガッツリ肉でも、と口を開いた瞬間。
「私もランチご一緒したいです」
「私も!」
「私もー佐枝さんとランチ行きたいですー!」
ものすごい勢いで同じチームの女性社員たちが俺を押しのけてきた。
うお、忘れてた!
先輩はイケメンだし有望だしでめちゃくちゃモテる。
先輩の右手の薬指には指輪がはめられてるのに、だ。
いやーでもあのときはびっくりしたなー。
恋人がいるのは知ってたけど、ある日突然指輪してきて。
あの日の社内での阿鼻叫喚。
『佐川どういうことよ!!!』
なぜか俺が怒られたし。
「―――佐川。行くぞ」
女って怖いよな、と身ぶるいしていたら先輩が呼びかけてきた。
先輩のまわりにはうちの社でもかなりレベル高い可愛い&綺麗なお姉さんたち。
……羨ましい。俺にひとりわけてって、先輩こんな状況カノジョに見られたらヤキモチ妬かれますよー!!
あー俺もカノジョ欲しいよー。もうかれこれ1年いないんだけど、なんでだなんでなんだくっそー!
「佐川!」
呆れたような先輩の声にようやく我に返って俺はすでに先を行っていた先輩たちの後を追ったのだった。

***

「佐枝さんクリスマスはどう過ごすんですか?」
「やっぱり仕事忙しいし残業ですよね?」
先輩にはカノジョいるっつーのに皆逞しい。
俺が行きたかった大盛り定食の店は即却下されて来たのはオシャレなカフェ。
ランチはワンプレートで彩りよく料理が盛り付けられてる。
けど―――足りないっつーの!!
会社戻るときにコンビニでなにか買って戻ろう。
フォークでサラダをつつきながらむしゃむしゃ食っていたら、
「クリスマス……早く帰りたいね」
と、先輩がほのぼのー……と呟いて微笑んだ。
明らかに今カノジョのこと考えてるでしょ、先輩!!!
俺はもちろん女性社員たちなんてシーンとして苦笑浮かべてるよ。
「そ、そうですね……やっぱクリスマスは……」
いっそここらではっきり望みはない!って女性の皆様に引導渡してやるべきじゃないだろうか、と先輩に話を振ろうとした。
「恋人と過ごされるんですか?」
「佐枝さんの恋人ならとてもステキな方なんでしょうね」
「見てみたーい」
「……」
コエェエエエエ! 今度は品定め?! 品定めなのか!?
「写メとかないんですか?」
「……えっ……写メ……」
先輩すっげぇ困ったように視線を泳がせてる。
あ、でも―――ぶっちゃけ興味ある。
だってさ紹介してくれないんだもんなー、先輩!!
後輩としてはフォローしてやるべきなんだろうけど、好奇心で成り行きを見守ることにした。
先輩はスマホを取り出しておそらく写真フォルダを見だしている。
さすがに横から覗き込むなんて真似はできずに俺たちは先輩の様子を伺う。
「……あ、これ」
ぼそり、と先輩が呟いた。
なにかいいのがあったのか!?
微かにだけど先輩の表情が緩んだ。
カノジョの写メキター!!
「先輩! 見せてください!!」
「えっ、でも」
「ちょっとだけ! ちょっとだけですから!!!」
好奇心に勝てずに俺は覗き込んでしまった。
そんな俺につられるようにわらわらと女性社員たちも覗き込む。
写メには、
「……」
「……」
「……」
「……」
「……すっげ……可愛……」
「……若い……」
「……美少女……アイドル?」
「……負けた」
唖然とするくらい紛れもない美少女がいた。
しかも最近撮ったのかミニスカサンタコスしててピースサインで写ってるんだけど、いやまじですっげぇ可愛いんだけど。
え、しかもすっげぇ若いだろ!?
俺より下にしか見えねーし!!!
先輩ときっとペアリングしてる子がこんな若くて可愛い美少女だなんて!!!!
うおおおおおなんてことだ!!!
さすが先輩!と思いたいけど、いまは正直悔しいっていうか羨ましい!!!!
そりゃクリスマス仕事してる場合じゃねぇよ、早く家帰ってイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャしたいよ!!!
「はい、終わり」
照れくさそうに先輩はスマホをしまってしまった。
そしてひとり楽しそうに食事を再開する先輩。
その周りで―――滅多打ちになり意気消沈している女性社員と、カノジョ欲しいいいいいいとなってる俺。
あのレベルを見せられて敗北を感じないわけないよな。
多少気の毒に思いつつ、俺は気づいた。
類は友を呼ぶ!
美少女の友達は美少女!?
「先輩!!! 俺にカノジョさんの友達紹介してください!!! 合コンしましょう!!」
ナイスアイデア!勢いよく叫ぶと、
「しない」
あっさり笑顔で拒否された。
「そんなー!! 先輩だけズルイですよー!! 俺も若くてピチピチ美少女と付き合いてー!」
なにがなんでも今度紹介してもらおう!
めげることのない俺だったがこのあと「佐川あんた私たちにケンカ売ってるの?」「ピチピチじゃなくて悪かったわね」「クリスマス、あんた残業だから」なんて俺はなにもしてないのに!!!やつあたりされるハメになることをまだ俺は知らなかった。


*おわり*

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