12月17日


「智紀さんの変な飲み物シリーズで猫化とか犬化とかショタとか…( ̄▽ ̄*)あはは」

***


「……遥。お前……どうした」
風呂からあがると、遥の様子が変わっていた。
なにがって、見た目がだ。
「え? どうしたって、どうかしました?」
きょとんとした遥。
ラグの上に座り込んでいる遥の―――お尻のところからふさふさの犬の尻尾のようなものが出ていて、それがパッタパタと動いている。
そして遥の頭には尻尾と同じ毛並みの耳。
「……どうかって……」
俺は遥のそばに座って手を伸ばし耳に触れた。
柔らかい毛並みとあたたかい耳。
作りものじゃなく、本物のような感触だ。
「先生?」
だけど本物なんてことがあるはずない。
人間に犬の耳が生えるなんてあるか?
それもつい30分前はなんともなかったのに。
次に俺は尻尾へと手を伸ばす。
パタパタと左右に揺れている尻尾。
本物の犬ならその揺れは喜んでいるんだなってわかるものだ。
「ひゃっ」
尻尾に触れた途端、遥が身体を跳ねさせ、声をたてた。
「な、なに?」
戸惑ったように遥は視線を揺らして、俺の手、掴んでいるものを見る。
「……尻尾?」
不思議そうに目をしばたたかせている。
ぎゅ、と興味本位に尻尾を握る手に力を込めるとまた「ひゃぁ!?」と声を上げた。
「遥お前……どうした?」
「えっ……これ僕のなんですか?」
「どう考えてもそうだろ」
信じられないが、どうも本物としか思えない。
俺の言葉にシュン、と遥の頭上の耳が垂れさがる。
「……そんな。なんでこんな」
「思い当たることはないのか?」
「なにもないです……」
うなだれる遥に嘘はなさそうだ。
ふと俺はテーブルの上に見慣れない瓶があるのに気づいた。
なにか飲みモノでもはいっていたような形跡の瓶。
「これは?」
「これ―――知り合いのお兄さんからもらったんです。そういえば、面白いことが起こるよって言ってたような」
「……」
「もしかしてこのせいかな?」
「……」
瓶を手にすると『ワンorニャン! 貴方はどっち!?』と書いている。
一日限定!貴方の体質に合わせてわんわんかにゃんにゃんになれるよ―――って、なんだこの嘘臭いというか怪しい飲み物。
「……ど、どうしましょう、先生。僕もしかして犬になっちゃうんでしょうか?!」
飲む前にラベルの説明見なかったのかと思いつつ、いまにも泣きそうな遥の耳はもう限界だろってくらいに垂れ下がっていて、俺が握ったままの尻尾もショボンとしている。
「……犬になったら俺が世話してやるよ」
一日限定って書いてあるから大丈夫だろ、と言ってやればよかったのを、気づけばそう言っていた。
一気に耳が元気に立ち上がり、尻尾も俺の手からするりと抜けて元気に揺れ出す。
パタパタパタ―――と心情そのまま現しているような尻尾の動きに、つい吹き出すと遥が首を傾げ。
俺は笑ったまま遥を押し倒した。
「―――とりあえずこの尻尾がどういう風に生えてるのか確認してみないとな?」
こんなありえない状況夢かもしれない。
夢なら夢で楽しむのもアリか。
遥のズボンに手をかけながら、触れていったらどう反応するのか楽しみだった。


*おわり*

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